ツイッターの診断でヤンデレお題をやってみたら、診断結果の一覧が見事に狛日で埋まっていたので、じゃあその流れに乗っかってみようと書いてみました、初ダンガン2です。
裏で黒バスやROの原稿をやってたりしたのですが、本年一作目の投稿はダンガン2になりました。今年もまったりマイペースに投稿していきたいと思いますので、宜しくお願い致します。
ちなみにお題とその結果は以下の通り。
crosstrouble_aで殺伐・ヤンデレものを創作するならお題は/心までは手に入らない/もっと殴っていいよ、それでも愛してる/もつれ合うように転がり落ちる です http://shindanmaker.com/238431
ダンガンは1と2の両方をプレイ致しましたが、果たしてキャラを掴み切れているかどうか……心配です。あとそこまで激しいモノではありませんが、表現が少々一般向けでない部分が御座いますので、R15Gくらいにさせて頂ければと。申し訳御座いませんが、該当年齢の方及びグロテスクな表現に抵抗がある方は、閲覧をご遠慮下さいますよう、お願い致します。
※下記折り畳み先の本文では、スーパーダンガンロンパ2のネタバレを含みます。一部キャラクターのネタバレ及びストーリーの展開・根幹についての記述がありますので、未プレイの方はご了承のうえお進みくださいませ。 (ゲーム展開については確認しながら書いたつもりですが、間違っていたら申し訳ありません)
※しつこいようですが、スーパーダンガンロンパ2のネタバレを含みますので未プレイの方はご了承のうえお読みくださいませ。
超高校級の『何か』である日向創君。果たしていったいどんな希望の光を放っているのか、記憶が曖昧で未だ不明だという彼は、傍目にはボクと同じ匂いのする、至極平々凡々な男子高校生だ。そう、希望という光に無垢で純粋な憧憬を抱く、ボクと同類の匂い。
けれどボクの本能は果たして彼の中に何を嗅ぎ取ったのか。初めて彼と目を逢わせたその時から、日向君の澱みない視線をこの身に浴びるだけで両手両足、爪の先までが痺れ、強烈な恍惚感が全身に行き渡っていた。
彼に見つめられ、そして見つめているだけで血流がドクリと脈打つ音を鼓膜が拾うほど昂ぶるこの衝動は、もはや思慕や憧れなんて生易しい感情では説明がつかない――そう、今も。
「狛枝……お前どうしたんだ?」
懐疑の響きを持った声音で、日向君はじっとボクを見ている。
ああ、そうだよ。学級裁判という名の絶望に立ち向かうキミの放つ光も良いけれど、他の人なんて見ていないで、そうやってずっとボクに注視しておいでと願ってしまう。
もっと、もっと翻弄してあげるから、ボクの言葉の手を取って、くるくる踊るキミを見せてよ。
(可愛いかわいいカワイイ可愛いかわいいカワイイ)
困惑と幾分かの恐怖に揺れる彼の瞳をこんなに美しいと思うのは何故なんだろうか。
大海に浮く頼りなげな木の葉のように揺れる彼を、もっとシェイクして壊れそうなくらいに揺さぶりたい。同じ挙動不審さを見せる他に皆には、超高校級の光を持っているんだから君達はもっと堂々としていればいい、なんて思うのに。日向君は、彼だけは、おろおろ戸惑う姿さえも可愛いと思ってしまう。
(あれ、これって贔屓?)
贔屓、贔屓。つまり日向君はボクにとって、超高校級である素晴らしい面々が集まったこの集団の中でも、更に特別な存在なのか。
希望の中の希望――胸の中でそう呟くだけで、テンションが異様に高まる。高校生男子にしては細めなあの体に、凝縮された濃密な才能と希望が詰まっていると思うと、それだけでたまらない。いっそ彼の身を切り開いて、胸の中心で真っ赤に熟れて蠢く希望の果実を食んでしまいたい衝動に駆られる。
(きっととても美味しいんだろうね……そう、他の誰よりも極上で甘く、舌の上で蕩ける、希望の味)
希望に溢れた尊い日向君の一部を、ボクのような些少で塵芥にも満たない存在に取り込むという、最低最悪で下劣極まりない情景を想像するだけで全身が沸騰しそうになる――いや、正確にはもう沸騰していた。学級裁判の最中だというのに、ボクの妄想内では、バラバラに切り刻まれた日向君がボクに略奪されているのだ。
それでも日向君の光は一欠片だって損なわれず、例え細切れになってしまっても一切の力強さを失わないだろうという、不思議な確信がボクにはあった。だからこそ、妄想内とはいえ希望である彼に狼藉を働き、好き放題に出来るのかも知れない。
(そんなことはしないけれどね。だって誰よりも素晴らしい希望をわざわざ摘むだなんて、有り得ない。ボクが踏み台になって日向君を輝かせるならともかく、ね)
一進一退する議論の最中、判りやすく様々に変容させたボクの雰囲気に呑まれたのか、正面に居る彼がボクの視線を受けて身を縮込ませる。雨に打たれた子兎のように怯える日向君の姿があまりにも可愛らしくて、そのくせ鋭い推理を小気味よく展開してボクを、そして『犯人』を追い詰める、そのギャップがたまらなく、イイ。
ねえ。キミはやっぱりボクの思っていた通りの人だよ、日向君。
だからもっともっと、キミには輝いて欲しい。その為なら何でもするよ。そう、こうして――真偽が見えている議論でも、『犯人』に味方するような発言をしたり、キミに反論をけしかけたりね。さあ、日向君。ボクの事を踏み越えて、キミの希望をよりいっそう輝かせるんだ。
「――それは違うよ」
初めての明確なボクとの対立に、ごくり、と緊張に震えた日向君の形良い喉仏が鳴動するのが見える。
真実を射貫こうとする鋭い視線を受け、今この瞬間、この場の誰よりもボクはキミを独占しているんだという事実に、涙腺が緩むほどの感動すら覚えた。
(ああ、日向君。キミの鋭いコトノハで、もっとボクを切り裂いて――)
「――で、それが一体この状況とどう繋がるんだよ」
「え、判らない?」
「判らないから聞いてるんだ」
おかしいな、ちゃんと説明したんだけど――そう呟いて首を傾げると、まだどこか眠たそうに見える眼下の日向君は、苦虫を噛み潰したような顔で力なくボクを睨み上げた。ふふ、可愛い。気力に満ちあふれているキミも良いけど、そうして力を無くしているキミも良いね。
でも折角気分良く頬を撫でてたのに、手を払われたのは寂しかったかな。そりゃ、ボクのような存在が超高校級で希望の光を内包する尊いキミに気軽に触れるなんて、許されないのかも知れないけれど。
「なんで目を覚ましたらお前がこの部屋にいて、しかも俺の顔を覗き込んでるんだよ」
「え。んー……じゃ一言で説明するなら、夜這い?」
さっきの『豪華な部屋のベッドに横になっていたら、最初の学級裁判で日向君のボクを見る視線が段々と変容していく様子にゾクゾクさせられたことを思いだして。そうしたらいてもたってもいられずに、どうしても今すぐキミの顔が見たくなった』っていう説明では判って貰えなかったので、至極簡潔な一言にまとめたら、こめかみをひくつかせた日向君に深々とため息を吐かれた。
「ふざけるなこの変態。馬鹿なこと言ってないでさっさと向こうの、ストロベリーハウスの自分の部屋に戻れ!」
怒鳴ると体力が勿体ないよ、と耳元に口を寄せて囁いたら、今度は怒声じゃなく良い速度の鉄拳が飛んできた。
勿論、超高校級の幸運で避けることが出来たけど、日向君になら殴られても良かったなあ、とボクは些か後悔する。何故って、超高校級の才能をこの身に直接受けられるなんて、そっちの方が余程幸運ってものじゃないか。ああ――つまりこの不運は、次に来る幸運の為の布石だったのかな。これから向かうつもりの『あの場所』のことを思えば運気のシーソーとしては丁度良いのだけど、勿体なかった。
もう一度殴ってくれないかな。もしそれが気を失うほどの痛みだったとしても、キミからならきっとボクは幸せにしか感じないだろうから。
「おい、狛枝? 俺の話聞いてるのか」
「え? ああ、ごめん。ちょっとさっきの鉄拳、受けておけば良かって軽く後悔してた」
「…………」
「日向君、どうしたの。変な顔してるけど。もう一度殴ってくれる気になった?」
「……いや、何でもない。とにかく、さっきモノクマが来て明日は朝から集合って言ってただろ。お前だって寝なきゃ保たないぞ」
「嬉しいなあ、ボクなんかの心配をしてくれるの?」
「お前の心配じゃない、皆の心配だ。お前が来なかったら、モノクマのヤツが何するか判らないだろ。皆に何かあるかもしれないじゃないか」
そう言って日向君が仰向けのまま瞳を閉じる。食料も水すら与えられないこの閉じられた空間で、少しでも体力を温存しようと。もうこれ以上ボクの相手なんてしていられないから寝る、全身でそう告げながら。
本当に可愛いね、キミは。夜這いに来たって言ったボクの言葉、話半分にしか信じていないんだろう。でなきゃ、そんな無防備な姿を襲いにきた人間の前でわざわざ晒さないよね。
そっと顔を近づけると流石に気配を察したのか、日向君の瞼がゆっくり持ち上がった。鼻先がくっつきそうな至近距離で、いい加減に寝かせてくれと目が訴えている。
「寝ていていいよ」
「気になって寝てられるか」
「そう。なら別に目を開けていても構わないよ」
「何を、んっ……!」
言葉を繋いでいる途中だったけれど、どうにも我慢が効かなくてボクはそのまま顔を降ろして唇を塞いだ。最初から開いていた口の中に舌先を滑り込ませると、日向君の口内はカラカラに乾いていた。あー、喉渇いたよね。ボクのを少し分けてあげるから潤ってよ。
驚きに目を見開いた日向君がじたばたと抵抗するけれど、自重をかけながら両肩を押さえてしまえばほら、もう逃げられない。超高校級の彼が、ボクなんかの拘束から逃れられない――底の知れない興奮に身悶えながら、ボクは喉奥へと逃げる日向君の舌を絡め取った。優しく優しく何度も。日向君は途中から抵抗を止めて、吐息に混じって可愛い声を漏らしていた。混じり合った唾液が溢れそうになる度、舌を使って喉に押し込むと、ごくりと飲み干す音が聞こえた。ボクの唾液が日向君の喉を伝い落ちて、胃を犯しているんだと思うだけでたまらない。
暫くそうやって日向君を味わっていたボクは、少し名残惜しいけれど、とゆっくり唇を離した。日向君の頬はすっかり上気して、吐息は短く荒い。……やだなあ。もっと苛めたくなっちゃうよ。これから用事さえ無ければ、キミのことを組み敷いてしまいたいのに。
「なに、するんだ」
「潤いのお裾分け。喉、渇いてたよね。少しは足しになった?」
にっこり笑うと、更に顔を赤らめた日向君はボクから躯ごと背けてしまった。背中に拒絶の文字をでかでかと見せつけられたら、退散するしかないよね。
立ち上がったボクは、粗末な寝具に横たわる日向君の寝姿を網膜にしっかりと焼き付けてから、部屋の扉へと向かう。
超高校級の幸運がある以上、多分ボクは生きて戻ってこれると思うけど、それでも一応、モノクマ謹製のクローズドサークルでは何がいつ起こるか判らない。今生、やり残したことがあるまま終わりたくはないから、キミにキスをしに来たんだ、なんて。『あの場所』に向かうのがバレちゃうから、言わないけれど。
もう一度逢えたら、今の続きをしよう――――「それじゃあね、日向君……おやすみ、良い夢を」