緑黒の十二ヶ月を短編で書いてみようという、その第十一弾です。
まったり十二編、紡いでいけたらいいなと思っております。
一〜三月、四〜六月、七〜九月はサイト内とpixivにございます。
とても短いですが、一応女性向けなので本文は折り畳みで。
これでいよいよ十二月を残すのみとなりました。
と同時に差し迫る年末をひしひし感じる今日この頃であります。
【November】
目の前の光景に、緑間は言葉を失った。だがこれは、絶句するなというのが無理だ。
どこから調達したのか真っ白いエプロン姿の黒子が、「ちょっと頑張りました」とテーブルに料理を並べていく。
眉間に皺寄せ「どういうつもりなのだよ」と苦言を呈すると、「解りませんか」と小首を傾げられた。
「黒子。解らないから聞いているのだが」
「本当に緑間君は、行事関係疎いですよね。もう少し勉強以外のことも知った方がいいですよ」
呆れ眼でこんこんと諭されようと、何を言っているのか全く以て解らない。大体行事と言っても今日は平日だ。
一人暮らしをしている恋人の家に遊びに来て、いきなり料理を振る舞われるイベントなどあっただろうか。
そんなのおは朝でも言って――いや、確か今朝のおは朝でそんなようなことを言っていたような気がする。
(イベント……というか、なんとかの日だと、確か……)
一所懸命、今朝の記憶を掘り起こす。が、ラッキーアイテムに意識がいっていた所為か、良く覚えていない。
「解るまで頑張って下さいね。あ、緑間君。荷物とジャケットこっちに貸して下さい」
手渡した鞄を部屋の奥に置いた黒子が、ジャケットをハンガーに掛け、丁寧にブラッシングしている。
甲斐甲斐しい様子は見ていて悪い気分では無いのだが、状況不明であるが故、どうにも不可解が先に来てしまう。
「さて。本気で解らないみたいですから、そろそろヒントをあげましょう」
「何なのだよ、いったい」
「うーん。どうするのが一番解りやすいでしょうね」
「……俺に聞かれても困る」
ふむうと顎に拳を宛てて、何やら思案していた黒子が、妙案閃きと言わんばかりにぽんっと手を打った。
テーブルの前に腰掛けていた自分の隣に座り込んだ黒子に、じっと見つめられる。動悸が早鳴る気がした。
「緑間君。お風呂にしますか、ごはんにしますか。それとも――」
小さな声で続いた爆弾発言。加えて上目遣いに、照れの混じった潤んだ瞳。おまけに頬が紅潮していて。
目の毒という言葉がこれほど当てはまる状況もあるまい、と緑間はごくり、喉を鳴動させた。
「……正解が解ったのだよ。その三択全てだと言いたいところだが今は――黒子、お前がいい」
本心を告げた顔が火照る。誤魔化すように黒子を胸に抱き寄せると、嬉しそうに背中へ腕が回された。
今日は十一月二十二日、良い夫婦の日です――おは朝キャスターの声が、どこかから聞こえた気がした。
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