2013年09月21日

緑黒で四季彩々(九月)

表題通りですが、緑黒で四季彩々、九月です。

緑黒の十二ヶ月を短編で書いてみようという、その第九弾です。
まったり十二編、紡いでいけたらいいなと思っております。

一〜三月、四〜六月はサイト内、pixivにございます。


とても短いですが、一応女性向けなので本文は折り畳みで。


九月は早くUPする、つもりだったのですが遅れに遅れましたorz
スパークの原稿もあるのですが、十月こそ早めに……!




【September】



 河川岸に群生したススキの穂が夜風に揺れる。見上げた空には、綺麗な月がぽっかりと浮かんでいた。
 さやさやと穂先が重なり、さらさらと流れる川音に同調する。一人で観るには些か寂しい風景だった。
 秋の川風に抱かれ、月光に照らされて恋人を待つというのも、それはそれで風情があるかも知れないが。
「お待たせしました、緑間君」
 呼びかけられた声に振り返ると、相変わらず気配を絶つのが上手い待ち人がそこに居た。
 シンプルな白いシャツに、スカイブルーのスラックス姿が闇夜に浮かぶ。
 風呂上がりなのだろうか。黒子の髪先から仄かに石鹸の香りが風に乗って、鼻先をすり抜ける。
 どくん、と大きく胸が鳴り、そのまま自覚できる勢いで脈拍が加速していく。
 数度撫でたことがあるだけの、しっとりとした髪に指を通したくなる。
 一度も触れたことの無い、柔らかそうな頬に手を添えてみたくなる。
 宵闇に、月明かりの中、二人きり。呼び出したときは深く考えていなかったのだが、意識し始めると止まらない。
 分別とか自制とか、単語としてはそんなものを試されている気がして、俺は深く息を吸って、吐き出した。
「夜のデートっていうのもなかなか良いですね。静かですし、邪魔も入りませんし。結構好きかも知れません」
 ああ、とだけ返して首肯する。
「それにしても、どうして今夜だったんですか? お月見なら、十五夜は明日だったと思いますけど」
「判っている。今夜は十四夜、満月では無い」
 じゃあ、何故――黒子がこちらを見上げ、視線で問うてきた。
「未だ完璧では無い月だからこそ、お前と二人で眺めたかったのだよ」
 傍から見て真円とほぼ変わらない。けれどやはりが欠けている、何かが足りない十四夜月。
 晴れて恋人同士となり円熟を迎えた筈なのに、未だぎこちない俺達には余程似合いに思えた。
 だから――これから満ちる月のように、俺達もそうなりたいと。
「緑間君らしいですね。良いと思います、それで」
 近代を生きた文豪の、洒落た告白には遠く及ばないが、意図を正確に読み取ってくれたらしい。
 穏やかに笑んだ黒子が、こほんと仰々しく咳払いをして、俺を見上げた。
 無言のまま互いに近づいた手が繋がり、指が絡み合う。欠けていた隙間に、幸せが満ちた気がした。
タグ:緑間×黒子
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。