2013年08月20日

緑黒で四季彩々(八月)

表題通りですが、緑黒で四季彩々、八月です。

緑黒の十二ヶ月を短編で書いてみようという、その第八弾です。
まったり十二編、紡いでいけたらいいなと思っております。

一〜三月、四〜六月はサイト内、pixivにございます。


とても短いですが、一応女性向けなので本文は折り畳みで。


夏の祭典原稿をやっていた関係で、立秋どころかもう半ばも過ぎてしまいましたorz
い、一応残暑見舞いには間に合ったような感じですが、九月はもっと早めに上げたいなと思っております。

【August】



 障子越しに、居間の明かりが仄かな光源となって、二人きりの縁側を照らしている。
「……これが最後か。線香花火とは、〆に相応しいな」
 絣地の浴衣を纏った緑間君が、独り言のようにぽつりとそう零した。
 渋い紺色は彼にとてもよく似合っていて、整髪料で後ろに流した髪も格好良く、思わず見惚れてしまう。
 花火をしましょうと誘ったのは僕で、折角だから浴衣を着てきて下さいとお願いしたのも僕からだった。
 夏も終わりに近づいているというのに、お互い部活が忙しく、遣り取りはメールと電話ばかり。
 勿論、学生バスケにとって夏がどれだけ大事な時期なのかは判っている、つもり、だけど。
 学校も違う僕らが、まともに二人きりで逢えたのは、夏休みに入ってなんと今日が初めてなのだ。
 緑間君からの誘いもないままで、正直、本当に僕は緑間君の恋人と言えるのか、心の底から不安だった。
「黒子? どうかしたのか」
 何でもありません、と首を横に振る。この先に不安を感じているなんて、知られたくない。
 今の解答で果たして納得してくれたのだろうか、緑間君がテーピングの巻かれた左手で線香花火を摘んだ。
 眼鏡のレンズに、安っぽい百円ライターの炎がちらちらと映り込んで、その姿がやたらと艶っぽい。
「線香花火って、花火の中で一番好きなんです」
 どきりと高鳴った胸の鼓動を誤魔化すように言うと、何故好きなのかと、視線で問われている気がした。
 上手く言葉に出来るか判りませんけど、と前置いてから僕は、理由を少しずつ説明していく。
 線香花火は持ちようによって、他のどんな手持ち花火よりも長持ちする。小さくとも、か細くとも。
 長い時間、灯り続けることが出来る。そんな風に、君と少しでも長い時を過ごしたいと、そう答えた。
「――って、緑間君。何か怒ってませんか? 何か不味いことでも言いましたか」
 あからさまに口の端を下げ、眉間へ皺を増やされれば、幾ら暗がりでも不機嫌なのは判るってものだ。
「気にくわないのだよ」
「……何でですか。というか、何がですか」
「俺とお前の関係を、例え長く灯ろうと、儚く消えてしまうものに例えるな。俺の気持ちは、そんな――」
 簡単に消えるようなものじゃ無い、と。声を絞り出した緑間君の手から、線香花火が地面に落ちた。
 強引に引き寄せられた僕の体が、緑間君の腕へすぽりと収まる――僕の心から、不安が消える音がした。
タグ:緑間×黒子
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。