2012年09月07日

黒子のバスケで汝は人狼なりや?[誠凛編その5.5]

というわけで、表題通りですが黒バスで人狼を題材に書いてみました の第六弾です。
連作となっておりますので、お読み頂く際はお手数ですが[その1]からお願い致します。


以下、注意事項です。


・このお話は黒子のバスケの登場人物が対面式の「汝は人狼なりや?」をするお話です
・あくまでゲームをするお話ですのでシリアス要素はほぼありません
・むしろコメディ寄りです
・基本的に火神ん視点でお話が進む小説で、ログ形式ではありません

・中の人の参戦経験はC国で数度ある程度です
・F国ログも読み込んでおりますが、今回はC国仕様(狂人が囁きに参加できる)です
・役職配分は村5狼2占霊狂狩の11+1人村です
・吊り手計算が苦手なので間違ったらすみませんorz



今回は少々短く、閑話休題。いわゆる墓会話(青ログ)に相当する部分です。
人狼はbbs形式でしか参加したことが無いのですが、この墓ログ、楽しいんですよね。
まったり観戦しつつ推理もしつつ、同じく襲撃or処刑された人達との雑談が楽しいです。
地上で戦っている仲間にこっそりエールを送ったりするのも好きです。
……でもやっぱり、最後まで残りたかったなあと毎回思うのもお約束ですよね。






「まさか降旗までこっち来ちゃうと思わなかったよ」
 緩く体育座りをしていた河原が二人を見て笑うと、「ホントホント」と肩をすくめた福田が調子を合わせるように視線を降旗に寄せた。
「俺と一緒にこっちくんのいったい誰だろーって思ってたら、まさかの降旗だし。これでドロップアウトエリアに一年ベンチ組が揃っちゃったな」
 目の前でぱしっとハイタッチをする姿が、水戸部の目から見てとても微笑ましく映る。
 誠凛バスケ部において味わうことの出来るこの疑似家族のような空気が水戸部は好きだった。
 試合中の一点を争う緊迫感や、今や得意の一つとなったフックシュートの決まる瞬間も勿論好きなのだが、こうして部員達が和気あいあいとしている普段の雰囲気も同じくらい居心地が良い。
 弟妹達が多く居る水戸部にとって、後輩部員が仲良くじゃれている姿を見るのは、ことのほか好きな光景だった。
 だがあまり騒ぎすぎると向こうに迷惑が掛かってしまう――そう思った水戸部は、降旗の肩をとんとんと軽く叩いてから真っ直ぐ立てた人差し指を自分の唇に添える。
 意図は無事三人に伝わったらしく、小声になった「すいません」の三重奏が申し訳なさげにそれぞれの口から零れた。
 以降、トーンダウンしての会話が続くのを、水戸部は温かな目で見守りながら耳をそばだてる。
「水戸部先輩は襲撃だから仕方ないとして、俺ら処刑って情けないよなー。しかも俺なんて初日だぜ初日。幾ら初心者とはいえ、もうちょっと粘りたかったよ」
「そう落ち込むなって河原。俺だって似たよーなもんなんだから」
 顔を見合わせ、はあっとダブルでため息を吐いた河原と福田は、未だゲームの渦中に居る皆を羨ましそうに見ている。
 ゲームの最中は脳がでんぐり返る勢いでフル回転し、こちらに来ることが決まったときにはいっそホッとした風な表情も見せたものだが、いざこちらのエリアで安穏としてしまうと、向こうの推理合戦に加われず傍観者で居るしかないというのが些かつまらないというのは、今の水戸部にも判る感情だ。
 ましてや今現在、議論は白熱の一途を辿っている。おそらく、ゲームとして熱くなるのも処刑者と襲撃者が出てからなのだろう。
 先陣を切ってその対象となってしまった身としては、もう少しあの輪の中に残っていたかったと思ってしまう。
「ま−、占い師ってのは表に出た時点で喰われる確率高いから、なんとなくここに来るだろーなって予想はしてたよ」
「え、マジ? じゃ降旗、お前やっぱ本物のうらな――あー悪い今の無し無し。無しな!」
 つい口を突いて出てしまった『真実を求める言葉』を途中で濁し、福田は口を押さえてぶんぶんと首を振る。
 ネタバレ禁止で答え合わせはゲーム終了時に皆でと言った口で、その問いを口にするのは憚られたのだろう。
 ――が。
 当の降旗はというと、何でも無いような顔をして肩をすくめた。
「いいよ福田、別に聞いても。俺が本物の占い師だったのか聞きたいんだろ?」
「ええっ?」
「なっ……降旗お前さー。折角福田が我慢してんのに、それはちょっと意地が悪いぞ。俺ら、ネタバレは最後って言ったの聞いてただろ?」
 おろおろする福田に、むうっと唇を突き出した河原がジト目で降旗を恨みがましく眺める。
 知りたいのは自分も同じで我慢をしてるのに――と、河原のあれはそんな文句がいっぱいこめられた視線だ。
 悪い悪い、と降旗が宥めるように、まだ唇を尖らせている河原の肩を叩く。
「だって聞かれても何も困ることないんだって。俺はただこのゲームが終わるまで、『俺が本物だよ』って言い続けるだけだし」
「へ?」
「ん?」
 同時に首を傾げた福田と河原に、降旗が「だからさ」と悪戯っぽく笑った。
「もし俺が狂人だったとしても、本当の占い師だったとしても、ネタばらしをしないならここで言うことは同じなんだよ。『俺が本物だ』ってね」
 帰国子女で発音が抜群に良い火神と違って、降旗が見事なジャパニーズイングリッシュで「あーゆーおーらい?」と茶化すように笑う。
 大人しく真面目な印象が強かった降旗だが、案外茶目っ気があるんだなと水戸部は新たな発見をした気がする。そういえばさっき火神と話しているときも、そんな感じだった。
 まだ首を傾げたままの河原に対し、理由を気付いた福田が「あ、そーか」と閃きの良い表情でパチンと指を鳴らし、小気味よい音を立てた。
 思いの外響いたそれは一瞬ゲーム中の皆の視線をひいてしまったが、慌てた河原が即座に「すんません何でもないっす!」と言ったのが良かったのか、事なきを得たようだ。
 ちらりとこちらを睨んだカントクに自分が微笑みかけると、しょーがないわね、という苦笑がアイコンタクトと共にかえってきた。
 これで一年生があとでカントクから注意を受ける確率は低くなっただろう。
 機転を利かせた河原に、福田が「ワリ、助かった」と手を合わせている。良いコンビネーションじゃないか、と水戸部の胸中がほっこり温まった。
「で、福田は俺の言いたいこと判ったんだろ?」
「おう。つまりここにいる降旗が狂人だったとしても、ネタばらし無しな以上はゲームが終わるまで真占を主張する。本物でも勿論真占を主張する。だから、真偽どっちだろうと、降旗の発言は『俺が本物だ』で変わらない――ってことであってる? 降旗」
「福田、ご名答。つーことで、俺は本物だよ」
「くーっ、見ろよ河原このドヤ顔! くっそう、推理で降旗が狂人か本物か当ててやりてーと思わねーか!」
「その気持ちは判るけどなー。俺もうパンク寸前で状況整理おっついてないんだこれが。つーことで福田に任せて良い?」
「おいおい河原、諦めんの早いって。とりあえずさ、お前狼が誰だと思ってる? あ、降旗は答えなくて良いぜ」
「ちょっ、なにそれ! 俺も仲間に入れてよ推理!」
「だってお前が狂人だったら、仲間知ってんじゃん」
 二人だけで推理を始めようとした福田に降旗が抗議の声を上げたが、それは福田によってあっさりと却下された。
「その辺ちゃんと気をつけながら話すから、俺だけ除け者とか寂しいから交ぜてくれってば」
 まあ、確かに狂人なら答えを知っているわけで、推理には参加させられないという福田の言も判らなくはない。
 だが降旗が本物の可能性だってあるのだから推理に参加しても良いんじゃと思うが、実際のところ降旗と日向、どちらが真で偽かは水戸部にも見当がついていなかったりする。
「ジョーダンだって、降旗」
「そうそう、一緒に推理しよーぜ。でもネタバレはマジ禁止な」
 両側から福田と河原に挟まれるような格好になった降旗が「ちょっと本気にしたんだからな!」と拗ねたように口を曲げた。
「で、本題だけどさ。狼、マジで誰だと思う? あの中で二人残ってるんだろ? 俺、狩人なら見当ついてるんだけどさー狼はマジで判らない」
「狩人だけでも判ってるなら凄いって! 教えて河原!」
「俺も知りたい!」
 興奮気味に福田が瞳を光らせ、同じように興味津々な降旗が河原に注目し、二人分の視線を集めた河原の指がゆっくりと――自分を指した。
「…………?」
 どうみてもこちらを向いている河原の指先を、水戸部はじっと見つめてしまう。
 自分の視線にハッと気付いた河原が「すみません」と頭を下げる。
 何に謝られたのか一瞬判らず目をぱちくりさせるが、「指をさして」と補足のように付け加えられて合点がいった。
 確かに人を指さすのは礼節上マナー違反だが、そんなこと気にしなくて良いのにと、水戸部は河原の頭をくしゃりと撫でる。スポーツマンらしく短く刈り上げられた髪が掌にくすぐったい。
「俺、水戸部先輩だと思うんだよなー狩人。狼もそれ勘づいて最初に喰ったのかなって。ほら、小金井先輩と狩人の話してたし」
「あー、そういえば」
 ぽんっと納得したように福田が掌へ拳を載せる。
 成る程なあ、と何やら考えて頷く降旗がうんうんと唸っていて、おそらく更なる推理を脳内で展開させているのだろう。
 そそっと降旗に寄った河原が、肘で降旗を軽く突く。
「なになに、降旗なんか判ったの? やっぱお前も水戸部先輩が狩人だと思う?」
「うーん。水戸部先輩って言いたいとこだけど、残念ながら俺的には違うんだよなー。一応、この人じゃないかって予想はあるんだけど、自信ないんだよな」
「んだよー、いいじゃん間違ってても。教えろよー」
「教えろよー」
 合わせたわけではないのだろうが、自然と二人の声が綺麗にハモる。
 ハッと気付いた河原が顔を上げた。
「なあなあ。もしかしてまだ狩人残ってるとか!」
「うん。俺の予想としては、まだ残ってる気がすんだよねー」
「ええええっ、まじか。じゃ狩人を気にしてたもう一人……小金井先輩とか」
 身を乗り出してぐっと拳を握りしめた河原に、横から福田が口を挟む。
「えーでもさ、狩人のことを話題にしてるってのは逆に狩人じゃ無いって可能性もあんじゃね? だから俺としては、火神あたり怪しいと思うんだけど」
「福田は何で火神が狩人って思ったんだ?」
 出てきた名前が意外だったのか、きょとんとして降旗が首を傾げた。
「いやー、役職フルオープン派だったじゃんあいつ。さっさと出てきて貰って、護る人間確定させたいのかなって」
 やいのやいのあーでもないこーでもないと推理を始めた三人のほのぼのとした空気に、思わずくすりと口元に笑みを零してしまう。
 可愛いなあ、と三人の遣り取りを見守るように見ている水戸部だが、ゲームの真相に関して言えば、内心は河原や福田と同様だ。
 いったい誰が狼だったのか、そして降旗の正体は果たして本物の占い師なのか狂人役だったのか、それは気になる。
 そう言えば何故自分が襲撃されたのだろう。河原の言う通り、『自分を狩人だと判断した』のだろうか。
 早々に襲撃されてしまい、ゲームからはドロップアウトしてしまったが、参加者で有りながら観戦者という立場な此処のエリアでも楽しめるというのは、人狼というゲームの面白いところであり奥深さなのかもしれない、と水戸部は思う。
 自陣営を応援したり、推理に頭を悩ませたり。気楽なのだけど物足りない、不思議な気分だ。
 とりあえず、今この場で三人に正解を――自分の正体を明かす気は欠片もないが、狼陣営が何を考えて自分を襲撃したのか、その理由を答え合わせの時にでも聞いてみたい。
 もうまもなく終わるかもしれないゲームの行方を見守りつつ、水戸部は未だ議論を続けている一年生三人組を眺めながら微笑んだ。
タグ:黒バス人狼
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