2012年06月27日

黒子のバスケで汝は人狼なりや?[誠凛編]

というわけで、表題通りですが黒バスで人狼を題材に書いてみました。
趣味全開です。


とりあえず、以下注意事項。

・このお話は黒子のバスケの登場人物が対面式の「汝は人狼なりや?」をするお話です
・あくまでゲームをするお話ですのでシリアス要素はほぼありません
・むしろコメディ寄りです
・中の人の参戦経験はC国で数度ある程度です
・なのでC国仕様(狂人が囁きに参加できる)です
・役職配分は村5狼2占霊狂狩の11+1人村です
・吊り手計算が苦手なので間違ったらすみませんorz


本文中で簡単な説明が入りますので、ゲームをご存じなくとも判るように進めていきたいと思います。もし興味を持たれた方は「汝は人狼なりや?」もしくは「人狼ゲーム」で検索頂くと色々出てくるかと。


今回は誠凛編の導入部分のみです。

夏に向けての原稿があるので先ずはそちらが優先になりますが、ドリームチーム編までゆっくり続きを書いて完結させたいと思っております。また、シリアスVer.の人狼(ゲームではなく実際に人狼審問に巻き込まれた彼らの話になるので、死ネタ・R18Gが含まれる可能性大です。その辺りはサイトアップのみになる可能性も)も書きたいと思ってます。

 それは春休みに入ったばかりの、とある日の放課後――。
 

「実はですね、火神君。赤司君がちょっとしたツテで――期間は限定されるんですが、自由に使えるコテージを手に入れたそうなんです」
「ちょっとしたツテって……お前コテージって普通、簡単に手に入るようなモンじゃねえぞ?」
「まあ、赤司君ですから」
 表情を変えずにケロッと言ってのける目の前の相棒は、コートの中で同じユニフォームを着ているときはこの上なく頼れるのに、プライベートになると一気につかみ所がなくなる。
 天井を仰いでから肩を落とした火神は特徴的な形をした眉端を歪ませ、呆れたようにため息をついた。
「お前らって、赤司に関する不思議を毎回それで片付けるよな」
 ここで言う『お前ら』とは無論、揃いも揃ってユニークな性格をしている、この相棒を含めたキセキの世代達を指している。
 あれをユニークと一言で表現して良いのかは迷うところであるが、火神としては他に的確な言葉を知らないので仕方ない。
 因みにここでいうユニークとは、日本語でいう「少々変わった」「珍しい」の意味合いとは少々異なる。英語でのuniqueは「他に類がない」「唯一の」の意味合いが強い。
 数回しか逢ったことのないキセキの世代の中でも、あくの強いキセキの世代達を一手にまとめ上げ、その主将を務めた洛山高校の赤司という人間とは、ウィンターカップでの衝撃的な出会いから試合にかけて、基本バスケ関連でしか接触した記憶はない。
 都内の高校に通う緑間に青峰、それから神奈川の高校である黄瀬は、交通機関を使って一時間あれば逢いに行ける距離だから必然的に交流もそこそこあるのだが、いかんせん京都と秋田は遠い。
 陽泉の紫原に関しては、同チームであり火神の頼れる兄貴分でもある氷室辰也から諸々聞くこともあるが、そういった人脈の一切ない赤司だけ情報が極端に少ないのだ。
 まだまだ計り知れない部分が多いので、こうして黒子の口から情報を伝聞することの方が多いのだが、感想を一言で総じるならmysterious――ミステリアス。
 日本語で言うと、確か摩訶不思議だったか。
 ――それはともかく。
 男子高校生が一人で住むには広すぎるマンションに暮らしている火神が言っても説得力は薄いかも知れないが、それには父親が一緒に住むはずだったという立派な事情があるわけで。
 一介の高校生がツテでコテージを手に入れたと言われても、それが当然だとは、とてもじゃないが思えない。
 いったい赤司ってのは何者なんだという空気が周囲を支配するが、黒子はそれがさも当然のように話している。
 この調子では恐らく当時帝光バスケ部に所属していた者達全てが、赤司に関してはこんな反応なのだろう。
「そうですか? でも他にぴったりの言葉が思いつかなくて」
「……ま、いいけどよ」
 良いようでしたら時間も惜しいんで続けます、と黒子が火神の疑問をあっさり流す。
 確かに良いと言って折れたのは自分だが、そうあっさり流されると若干イラっとする。
 その証拠に火神のこめかみが軽くヒクつくが、赤司についてこれ以上問答していても話が進まないのは事実なので、火神は不本意ながらも大人しく黙った。
「赤司君が言うには、折角だからいい余興を思いついたと。春休みの良い時期でもあることですし、リフレッシュも兼ねてそのコテージに僕と火神君の二人を招待したいそうです」
 命令の間違いなんじゃねえの――言っても無駄なのをこの一年でよく判っている火神は既に何かを諦め、髪をがしがしと乱雑にかき混ぜながら、自分と頭一つ分以上の身長差がある相棒を見下ろした。
「……で? そいつに俺も行けば良いわけ?」
「はい。そうして貰えると助かります」
「そりゃ別に俺は構わねーけど、それとこの状況がどう繋がるんだよ」
 ようやく本題に入れると安堵しつつも、ことが赤司がらみであることを知って不安を隠せない火神は、内心冷や汗を流しながらぐるりと周囲を見渡す。
 二年生は日向・伊月・木吉・小金井・水戸部・土田。一年生は黒子と火神の他に降旗・河原・福田。
 つまりはここ、相田スポーツジムの一室に、誠凛バスケ部の面々一同が全員集合していた。
 説明する側の黒子以外の誰もがここに集められた理由を一切聞かされていないようで、火神と同じように状況を掴めていないらしく、更にはキセキの世代がらみと聞いて、一様に困惑の表情で立っている。
 全員がミスディレクションオーバーフロウにでもかかったように黒子へと視線を集めている中、少し困ったように眉根を寄せた黒子が息を吐いた。
「赤司君の用意する余興っていうのが、いわゆる人狼ゲームなんです」
「JINRO?」
「やけに良い発音は流石帰国子女ですが、それじゃお酒です火神君。人狼ゲームの説明は後にするとして、当日はキセキの世代の皆が、パートナーを連れてやってきます」
「へー……って待て。つーことはタツヤも来るのか」
「ええ、恐らく。紫原君が連れてくるのは、恐らく氷室さんになるでしょう。他にも海常は黄瀬君と笠松さん、秀徳は緑間君と高尾君。足りない人数をどうするか僕の知るところではありませんが、多分そのあたりの面子でゲームをすることになると思われます」
「……で?」
「僕は、彼らに負けたくありません」
 瞳をらんらんと輝かせ、やる気十分の相棒をみた火神は心の中で、ああもうこいつ止まんねーなと呟き、ハハッと乾いた笑いを漏らした。
 人狼ゲームとやらがいったいどんなゲームなのかは判らないが、こうなった以上、最後まで付き合うしかないだろう。
 影が薄い上にぱっと見ておとなしく穏やかだと印象を抱く者が大半である、この黒子テツヤという相棒の中身は、その第一印象を大きく裏切ってくれる。
 火神自身も大概負けず嫌いなのは自覚しているが、黒子の負けず嫌いは自分のそれを上回っているんじゃと思うことが、今までの経験上多々あった。
 加えて頑固なのは筋金入りで、一度決めたことは余程のことでもない限り覆さない、男前な性格なのだ。
 それを踏まえて、ゲームに参加しないという選択肢が火神に残されているとは思えない。
 こちらの納得――というか諦めに近い雰囲気を肌で感じたのか、そのまま黒子が説明を続けた。
「このゲーム、かなり頭を使うんです。なので初挑戦の火神君が勝つというのは少々、いえかなり厳しいかなと。でも僕は負けるつもりはありません。なら負けてしまう前にリハーサルをすればいくらかマシになるかなと思ったんですが、二人で出来るゲームじゃないんですよね。で、困った僕はカントクに相談したんです。そうしたら、カントクがかなり乗り気になってくれて、全面協力を得ることが出来ました。良かったですね、火神君」
「おい待て、なんで俺が負けるの前提なんだよ。つーかなんで俺の為になってんだよ」
「練習しないと、火神君は負けます。無理です」
「てめえ、バカにしてんのか?」
「そうは言いませんが、万全を期すのは当然のことです。人狼ゲームは頭脳戦なんです。ゲームの概要も知らないままで、体力と本能メインな黄瀬君や青峰君、紫原君はともかく、頭脳派の赤司君や緑間君に勝てるとでも?」 
 うぐっと火神は息を呑んで押し黙る。
 少なくとも、実力テスト前に学力アップチームを組んで貰い、挙げ句緑間のコロコロ鉛筆に助けて貰った身分としては、頭脳戦に勝てるのかといわれると反論のしようがない。
「火神君。彼らに勝つって言ってくれたじゃないですか。僕と一緒に、キセキの世代を倒しましょう。赤司君の鼻を明かしてあげましょう」
「あれはそーゆー意味で言ったんじゃねえエエエエエエエエ」
「黙れバ火神」
「痛ってえ……なにすんだ! ……ですか」
 丸めた用紙で頭をすぱこーんと叩かれた火神が振り返ると、そこには腕を組んで仁王立ちしているカントク――相田リコの姿があった。
 思わず言いかけた文句の後半を無理遣り敬語に直し、それでもいきなり殴られるのは腑に落ちないと、口の端を曲げてリコを見下ろす。
 後方で伊月が「赤司の鼻を明かしちゃう……いいなそれ! ナイス黒子!」と嬉しそうな声をしているが、話がややこしくなるので今はスルーするに限る。
「キセキの学校が集合するんでしょ。二人が頑張ってくれないと、誠凛の恥になんのよ。わかる? キセキの世代に、誠凛の頭脳レベルが低いと思われるのだけは我慢がならないわ!」
「わ、わかった……です」
「よろしい――というわけで全員、今から配る用紙に目を通して頂戴ね」
 丸めた用紙を開いたリコが、そのうちの一枚を自分に手渡す。
 何かと思い火神は紙に目を落すと、そこには人狼ゲームとやらのマニュアルが書かれていた。
 はいはい順番にねーと言いながら、リコが残りのメンバーにも次々に用紙を手渡していく。そういえば誠凛バスケ部一同集合といってもリコの姿が見えたのはついさっきだ。
 くん、と紙に鼻を近づけて嗅いでみると仄かに香るインクの匂い。
 恐らくだが、リコはついさっきまでこれを何処かで印刷していたのだろう。
「こういうゲーム、私は嫌いじゃないわよ。メンタルを鍛えるのにも良さそうだしね。心理戦、駆け引き、ハッタリに状況分析。どの力もあって困るものじゃないし、研磨できるなら試合でも大きな武器になる――って黒子君に熱弁されてね。それについては私も全面同意。物は試しだからやってみようかと思って。たまには良いでしょ、こういうのも」
 珍しく満面の笑みを浮かべている黒子の胸中が見えるようである。上手くカントクを乗せることが出来て、してやったりな気分なのだろう。
 誠凛バスケ部において、カントクの権限というのはかなり大きい。彼女がこうだといえば大抵のことは決定されるのだ。
 純朴そうな顔をして、その実なかなか百戦錬磨なのは知っていたが、カントクを引っ張り出す黒子の知謀にはおとなしく敬服せざるを得ない。
「じゃ、黒子君に代わってここからは私が仕切るので宜しく。先ずは人狼ゲームの説明からいくわよー」
 こほん、とリコが軽く咳払いをしてから説明を始めた。
「このゲームの正式名称は『汝は人狼なりや?』っていうんだけど、まあゲームの成り立ちなんかはとりあえず割愛。興味があったらそれぞれで自宅に帰ってからでも検索して頂戴ね。ちなみにこのゲーム、経験者いる?」
「あ、俺やったことあります」
「降旗君が? 意外ねー」
「こうやって面と向かってやるタイプは初めてですけど、ネットの掲示板形式でなら何度か」
 成る程ね、とリコはさらさらと何やら手元のノートにメモを取る。
 角度的に火神の位置からは見えないが、恐らく降旗の項目に「経験者」とでも書いているのだろう。
「簡単に言えば、人間を食べる人狼と、ただの人間が一つの集団に存在していて、様々な能力者達を武器に、ディスカッションを経てフェーズごとに誰か一人を処刑していくの。集団に紛れている人狼を全員処刑してしまえれば人間の勝ち。逆に人狼はディスカッションの中で自分は人間なのだと周囲を騙しながらフェーズごとに人間を食っていって、最終的に人間より多く生き残ったら勝ちっていうゲームよ」
「へえ。なんだか面白そうだな」
「マジかよ伊月。俺なんてこのルール把握すんのに精一杯だぜ」
「大丈夫だって。日向、ゲーム結構好きじゃん。やってみたら案外楽しいかもよ?」
「テキトー言ってんじゃねえダアホ。いくらなんでもこんなん一朝一夕で出来るかよ……ったく」
 心底怠そうにプリントを眺めながら頭を掻いている日向の肩をぽんと叩いて「ま、やるだけやってみよう」と伊月が慰める。
「お、おい。なあ日向」
「なんだよ木吉。俺今こいつ読むのに忙しいんだって」
「人狼って本当に居るんだな!」
「だアホ。居るわけねえだろ。これはゲームだっつの」
「いや、だってほらここに『人狼の襲撃に遭うと、翌朝無残な姿で発見されることになる』ってあるぞ?」
「お前もういいから黙ってろ!」
 誠凛バスケ部の日常茶飯事な光景、いつものごとく不毛な会話をしている木吉と日向を横目に見ながら、小金井が挙手してリコへ質問を投げる。
「はいはーいカントク、この処刑と能力者って? よくわかんないだけど!」
「処刑っていうとちょっと物騒だけど、処刑された人はその場からドロップアウトすると思って良いわ。それから、人間達の中にいる能力者は、占い師と霊能者に狩人、狂人ね」
「四人ってこと?」
 そうね、とリコが小金井に頷いた。
「能力者の種類も本当はもっと色々あるんだけど、今回は未経験者ばっかりだし、最低限いると楽しい四種類にしぼったわ」
「へー」
「占い師はフェーズが切り替わるときに誰か一人を占って、対象が人間か人狼か判断できる。霊能者は処刑されたのが人間か人狼か判断できるの。狩人はフェーズの切り替え時に誰かを守護して狼の襲撃を撃退できるけど、自分自身は護れないわ。狂人だけはちょっと特殊で、人間だけど人狼の味方なの」
「人間なのに人狼の味方?」
 瞳にクエスチョンマークを踊らせた小金井が首を傾げた。ちらりと見上げて視線の合った水戸部も、やはり眉間に皺を寄せて同じように悩ましい顔をしている。
 ひょこっと顔をのぞかせた降旗がピッと人差し指をたてて口を挟んだ。
「狂人は人間に不利な動きをする役なんですよ、小金井先輩。でも人間には違いないから、例え怪しまれて占われても狼って結果が出ないんです。ルールによっては狼との会話も出来るんですよ」
「ほへー。でもさー降旗、会話って普通に出来るんじゃないの? ディスカッションで人狼見っけるんっしょ?」
「狼同士は特別に秘密の会話ができるんです。仲間同士で誰を襲撃するかとか相談が出来るんですよ。そこに狂人が混じれる場合と混じれない場合があるんです。掲示板形式だと裏チャットみたいなのがあるんですけど……カントク、対面式だとどうなるんですか?」
「そこはフェーズの切り替わり時に、他の皆に目を瞑って貰って、ゼスチャーで会話するって感じね。折角だし、今回は狂人入りで狼と会話できるようにしましょうか。降旗君の言う掲示板形式でやるっていうのも考えたんだけど、先ずはゲームを知って貰おうと思って対面式にしたのよ。こっちなら掲示板形式より簡略化されてるし、二時間もあれば終わると思ったの」
「確かに、掲示板形式だと一週間はかかりますからねー」
 周囲の会話に耳を傾けつつ、プリントに書かれたマニュアルを一通り読み終わった火神は、普段バスケットボールを掴んでいる大きな手で額を覆った。
 木吉や伊月は随分気楽そうだが、火神の心境はどちらかというと日向と近い。こんなもの、いきなりやれと言われても無理だ。
 そういう意味では当日のぶっつけ本番になるよりは、こうしてリハーサルの場を設けて貰ったのはありがたいのかもしれない。
 ――こんなゲームやらないのが一番楽なのだが、それを言ってはおしまいだろう。
「なんか……頭痛くなってくんだけど」
 冗談抜きに、こめかみあたりがずきずきと響くような痛みを訴えている気のする火神である。
「習うより慣れろっていうし、とりあえずやってみましょ。じゃ皆、円形に座ってー。ゼスチャーで判っちゃわないように、隣の人とは一定の距離を置いてね」
 カントクに言われるまま、ほぼ円形を描いて全員が床に腰掛ける。
 内側を向いて座っている面々の表情を見てみると、案外楽しそうな顔をしている者が多い。
 頭脳戦とはいえ、体力的にきつい練習よりも、ゲームが出来る方がいいと思っているのかもしれない。
(……ま、とりあえずテキトーにやるか)
 ふわあ、と欠伸をした火神が何気なく左側を向くと、そこにはやたら真剣な表情を浮かべ、何か言いたげな様子の黒子が居た。 
「火神君」
「……なんだよ」
「もしも君があまりに弱かったら、僕は降旗君を連れて行きます」
「はあっ?」
 だって彼のが経験者であるぶん勝率高そうですから、と黒子が淡々とした口調でこちらを見上げた。
 じっと見つめられた火神は、黒子の発言に内心鼻白む。
 人狼ゲームにおいては大まか事実ではあるのだが、降旗よりも明らかに格下だと宣言されたのだから、面白くなくて当然だった。
「君は僕の光ですよね?」
「たりめーだろ」
「というわけで、僕の相棒として一緒に行くためにも、頑張って下さい」
「上等だ!」
 売り言葉に買い言葉。
 この手のゲームはアメリカに居た頃にも誘われたことがあったが、はっきり言ってアウトドア派な火神にとって頭を使うセッション型のゲームは鬼門でしかなかった。
 けれど、こう真っ正面から挑戦されているのに、背中を見せて逃げるのは男がすたるというもの。
(そこまでいうなら見てやがれ。ぜってー勝ってやる)
 勿論黒子の為にキセキを倒すという部分も無くはないが、それ以上に火神の心中を占めるのは、男としての沽券、プライドの問題だった。
「じゃ、役職のカード配るから。自分で確認した後は伏せて、誰にも見せないでね」
「あれ。カントクは参加しないのか? ……んですか」
「私はゲームマスター。進行係みたいなものよ。あと、一番最初に必ず犠牲になる村人が居るから、その役を兼任ね」
 配られたカードをそっと覗くと、そこ描かれていたイラストは、やけにキャッチーでポップな人物で、あまりのポップさに火神は思わず吹き出しかけてしまう。
 だが笑う前に肝心の情報を確認しなければとカードをよくよく見ると、下の方に『村人』と書かれていた。
 つまり火神が引いたカードは――ただの人間だ。
(えーっと、てことはとくに役職じゃねえのか。頑張って狼を当てればいいんだな。でもって全滅させりゃいいんだよな。上等だ。誰が狼役かしんねーけど、俺の勘にかかりゃあチョロいぜ!)
 端から議論をする気も駆け引きをする気も皆無と言って良いことを思いつつ、火神は気合いを入れて拳をぐっと握りしめる。
 お前が狼なんじゃないのかと突っ込みを入れられそうな勢いの鋭い眼差しで、端から端まで全員を見渡した。
 とりあえず、表情からは何を引いたか読み取れそうにない。
「いい? じゃー一人一人カードを確認しに行くから、私にだけ見せてね」
 順々にカードを見てはメモを取っていったリコが、火神の前でしゃがんだ。
「頑張ってよ、火神君。誠凛がどう見られるかは、多分にあんたにかかってるんだからね」
「当然だ。……です」 
 闘志のみなぎる瞳でリコを見据えた火神は、心の底から燃えていた。
 
 ――こうして誠凛メンバーによる人狼ゲームの第一戦がはじまりを告げた。
タグ:黒バス人狼
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