2012年05月17日

RIKO'Sキッチン(順リコ)

5/16は日向君の誕生日ということで、おめでとうございます主将!


というわけで主将のSSを書こうかなーと思ったら見事に遅刻致しました。
一日遅れですが心からお祝いしたいと思います!

でも誕生日なのに誕生日ネタじゃないのは、先日黒バスの原作コミックスを最初から一気読みし直してしまった所為かもしれません。
やー、毎週ジャンプで読んでますし新刊が出たらその都度買って読んではいますが、一気読みはまた格別ですね! やっぱり黒バスは面白いです。
Twitterでも書きましたが、努力・友情・勝利のジャンプ王道キーワードがちりばめられてて、天才と呼ばれてる人達にもちゃんと壁があるのが良い。リコたん風に言うなら「いいなーホント、男子って」ですね。

アニメは次回からいよいよ秀徳の出番ががっつり増えますねー!
動いて喋る緑間&高尾にわくわくしっぱなしです! 早くこいこい出番出番! 
いやうん、もう出てきては居ますが秀徳の試合シーンが楽しみで仕方ないのですっ。
本誌の試合もかなり熱い展開になってますが、仕方ないのは判りつつも秀徳分が補充できてないので、来週のアニメで補えたらなと思ってます!

というわけで続きは折り畳みです。
今回のお話はタイトル通り日向主将×リコたんのNLとなっております。また、7巻58Qのネタばれを含んでおりますので、以上二点をご了承の方のみお進み下さい。 物心ついた頃にはもう、母親は家に居なかった。父も仕事が忙しくて、家で一人になりたくなかった幼い私は、父の仕事場で一日の大半を過ごしていた。
 通学鞄を持ち込んで学校の宿題をするくらい、そこ――相田スポーツジムは、私にとってもう一つの家だった。
 当初の理由は、一人で家に居るのが嫌だったからという稚い思いからだったけれど、次第に私はジムという場所そのものを好きになっていった。
 仕事場で見せる真剣な表情の父は子供心に格好良いと思ったし、ほとばしる汗とともに、初めは華奢だったりぶよぶよだった肉体が、父の指導でぐんぐん引き締まり、たくましく育っていくのを見ているのが楽しかった。
 いつしか父の仕事場は、私の好きな場所になっていた。
 思春期に至るこの年まで、母親という存在を一度も求めなかったと言ったら嘘になる。
 でも、死んだ母を想っていつまでも再婚しない父を責める気にはなれない。人の心は他人がどうこうしようったって無理。忘れられないならそれで仕方ないこと。


 だから――これもしょうがないことなのだ、多分。





「……やっぱあいつにもちゃんとお礼、言っとくべきよね」
 ベッドの上に体育座りをしたリコは、はあっとため息を吐いて携帯電話の画面をじっと見つめ、何度目かのため息を吐いた。
 日向順平――誠凛バスケ部の主将である彼に感謝を伝えたいと思って携帯を手にし、画面に表示されている番号を発信しようとしては止めて既に一時間が経とうとしている。
 手取り足取り細やかに作り方を教えてくれた火神と、優しい言葉で慰めをくれた木吉には既に電話をかけ終えたというのに、残りの一人になった段でリコの手は止まってしまった。
 このままでは、電話をかけるのに不適当な時間になってしまう。それは判っているのだが、どうしても通話ボタンが押せないのだ。
 普段、何気ない用事で電話をかけているときはここまで緊張しないのだが――たかがお礼、されどお礼。しかも謝罪付き。
 おまけに、幼馴染相手に改まって。
「だあっ!」
 行き場のないもやもやを吐き出すように、リコは意味も無く叫んで両手を挙げた。
 どうしても電話が出来ないならばメールという手も残されているが、二人には直接かけたのに日向にだけメールというのも気が引ける。
 というよりも、直接ちゃんと言わないと自分の気が済まない。
「あー! もー!」
 湯上がりの湿った髪にタオルを乗せたまま、リコは頭をぶんぶん振る。
 電話をかける前に何度脳内でシミュレーションしても、意識してしまって上手く言葉が出てこない。
 二人に言ったようにすれば良いだけなのだと頭では判っていても、勝手に声が上ずって胸の鼓動が早鳴る。
 何故上手く言葉が出ないか――その理由をリコは自分で良く判っていた。
 相手がただの幼馴染ならば、ここまで意識しないで済んでいるだろう。何気ない用事ならば、簡単に電話していつものように振る舞える。
 その両方ではない事態が重なっているから、ここまで躊躇っているのだ。
「もういい! 出たとこ勝負!」
 うじうじしているのは性に合わないと意を決し、頭から落ちたタオルを拾い上げてからリコは通話ボタンを押す。
 ばくばく煩い心臓の鼓動をおさめるように胸に手を当てながら一回、二回と呼び出し音を鳴らすが、大抵二コールで繋がる日向にしては珍しくなかなか電話にでない。
 一旦切ってしまったら、もう一度かけ直す勇気はすぐにでないだろうと思ったリコは、そのままコール音を鳴らし続ける。
 だが電話は何故か留守電にもいかず、一向に日向がでる気配は無かった。
「……まさか、胃痛で寝込んでたり……しないよね?」
 通話相手を待って鳴り続けるコール音を聞きながら、リコは今日の放課後を思い返す――。


「んぐっ!」
「ぎっ!」
「ごっ!」
 以下略――。
 たった一口食べただけで、次々と部員達が顔を赤くしたり青くしたりしながら、短い悲鳴をあげつつ、額に脂汗を浮かべながら咀嚼している。
 最初から判っていた、というかこうなってしまうかもと予想していた反応だったけれど、実際目の当たりにすると結構キツイものがある。
 夏合宿に向けて、食事メニューの試食会。そんなのを開こうと言い出された時点で、みんなが何を言いたいかくらい判っていた。
 料理の練習をしろと、そういうわけだ。
 誠凛バスケ部の監督兼トレーニングコーチである自分、相田リコの最大唯一の欠点である料理の腕をどうにかしようと思っているのだろう。
 自分の料理がどれくらいのレベルか判っているリコは、事前に材料や作り方、果ては栄養のバランスまで色々と下調べをし、今の自分に出来る最高のカレーを作った――つもりだったのだが、やはりというかなんというか、ダメだったらしい。
「おかわりジャンジャン言ってね」
 みんなの反応をあえてスルーし、リコは寸胴鍋の隣で満面の笑みを浮かべ、おたまで鍋をかき混ぜる。
 だが一同は最初の一口を延々咀嚼し続けるだけで、それ以上は一向にスプーンが進まない。
 自分に料理のセンスというものが壊滅的なのは自覚していた。
 幼い頃から外食かジムの食堂で食事を摂ってきたリコは、いわゆる「家庭の味」というものを知らない。
 母親が料理をしている姿を幼い頃から見ていれば、見よう見まねで何をどうするとどうなるというのが、なんとなく判るようになっていくものらしい。
 いわゆる、門前の小僧なんとやらだ。
 だが生憎リコが育った環境にそんな姿は無かったし、自分で作る必要に迫られることも無かった。
 その結果が、この料理だ。
 家庭科の調理実習では、失敗した場合に取り返しの付かない部分は同じ班の友人に任せ、その他洗い物等被害の出ないパートを担当して誤魔化してきた。
 今までのツケが回って来たと言ってしまえばそれまでなのだが、女子として手作り料理の反応がこれでは、なかなかに悲しい――というか心が折れる。
 作り手としては、折角作ったのだからもっと食べて欲しい。けれど監督としては、これからやってくる盛夏を前に体調を崩されるのは好ましくない。
 これ以上無理をさせるわけにはいかないと判断したリコは、寸胴鍋をかき混ぜていたおたまの手を止め、口元に無理遣り笑みを乗せた。
 内心の寂しさをひた隠してみんなに向き直る。
「やっぱりあんまり……おいしくない……っかな……」
 バンドエイドだらけの指を後ろに隠し、暗に「だからもう食べなくて良いよ」と言ったつもりだった。
 合宿中の食事は全て自分が作ると大言壮語を吐いたが、やはり自分には分不相応だったかもしれない。合宿費のやりくりは大変かもしれないが、なんとかして宿の食事代を捻出しよう。
 肩を落としたリコがそう思った次の矢先――。
(嘘っ……!)
 全員のスプーンが止まっているにもかかわらず、ただ一人、日向だけがおもむろにカレーを食べ進め始めたのだ。
 無理しなくて良い、残して良いから――リコを含めたその場の全員が口を挟む隙も無く、一秒たりとも手を止めずに次々と口へカレーを運び、あっという間に日向の皿は空になった。
「ごっそさん」
 完食の証と言わんばかりに、からん、と空の皿にスプーンを放る音が小気味よく響く。
 なんで、どうして――嬉しさと動揺と心配がないまぜになったリコは、呆然と日向を見つめていた。
 日向の後を追うようにカレーを食べ始めた木吉を除く全員が唖然とする中、おもむろに日向が立ち上がる。
「うまかったけど、ちょっと辛かったから、飲み物買ってくるわ」
 がらりと調理室の扉を開けたその背中は、逆光の所為もあってか、リコにはやけに眩しく見えた――。


「……ちょっと、本当に寝込んでないでしょうね」
 なかなか出ないのに業を煮やしたリコは、唇を軽く尖らせてぼやく。
 一応帰るときの様子は普通だったから体調に問題があるとは思えないのだが、日向の性格を考えればやせ我慢していた可能性も考えられる。
 もしそうならば起こさない方が良いかもしれないと思ったリコが通話終了ボタンを押そうとしたその時、慌てた声音がスピーカーから響いた。
「もしもし! わりい、出るの遅くなって。丁度キャッチホンでさ、木吉と話してた」
「鉄平と?」
「ああ。それよりどうしたんだよ、こんな時間に」
「こんな時間って」
 そんなに遅くないんじゃないと思ったリコがふと机に置かれたデジタル時計を見ると、既に二十三時を回っていた。
 風呂からあがって火神と木吉にかけたのは二十二時前だったことを考えれば随分と時間を無為に過ごしてしまったし、こんな時間と言われても仕方ない。
「ご、ごめん。日向君、寝てた?」
「ダァホ。木吉と電話してたって言ったばっかだろが」 
 電話の向こうで日向がいつもの調子で笑っているのを想像し、リコの緊張が解ける。
 声を聞いているだけでなんだか温かい気持ちにさせてくれるのは昔から変わらない。
 少しばかり乱暴だけど、棘を感じさせない親しみのある口調だ――クラッチタイム以外は。
「鉄平と何話してたのよ」
「たいしたことじゃねーよ。合宿に向けて色々な」
「そっか」
 すうっと息を吸って、それからリコはゆっくりと吐き出しながら言葉を紡ぐ。
「ん……えっとさ。今日はごめん。それから……ありがとうって言いたくて」
「いきなり何かと思えば、らしくないな」
「何よ、人がせっかく素直に言ってるってのに」
 いけない、謝ってありがとうと素直に言うだけの筈だったのに喧嘩腰になってどうすると、リコは自分の性格を恨めしく思う。
 好きな人の前でくらい素直で可愛い女の子でいたいと思わなくも無いし、そういうのに憧れないわけではないが、勝ち気な性分である自分とはキャラが違いすぎるし、無理をするくらいなら自然体でいたい。
「ま、日向君は倒れてて食べてないから知らないだろうけど、あのあとちゃんとしたカレー作れるようになったから。夏合宿の食事は安心して任せてくれて良いわよ」
「その後にまるごと材料を入れた寄せ鍋作ってたら説得力ないけどな」
「うぐっ……何故知ってる!」
「さっき木吉に聞いた」
 鉄平の奴余計なことを、と思うリコだったが大まか事実なので否定できない。
「おまけにそれみんなから突っ込まれて、材料ミキサーしたって? 普通しねーって」
「煩いわね。火神君に教わって、寄せ鍋も立派なレパートリーになったわよ」
「……夏に寄せ鍋はないと思うから、そいつは冬に期待だな」
 呆れたような日向の口調に、売り言葉に買い言葉で思わず突っかかってしまうが、感謝を伝える為にかけたはずの電話が、どんどん本題からずれまくっている気がするリコである。
 普段であれば軽妙な遣り取りで済ませられる会話も、変に意識してしまって上手くキャッチボールが出来ない。
 とりあえず今は、余計なことを口走ってしまう前に、早めに電話を切ってしまった方が良い。
「と、とにかくそれを言いたかっただけ。悪かったわね、夜遅くに」
「いーよ、別に。ああ、一個だけ聞きたいんだけど、俺カントクに礼を言われることなんかあったっけ?」
「……完食してくれたから。最初のカレー」
「あれは……別に俺だけじゃなくて木吉も食ってたんだろ」
「鉄平にもちゃんと電話でお礼言ったわよ。料理教えてくれた火神君にもね。日向君が最後」
「少なくても、俺には謝罪も礼もいらねーよ」
「何でよ。まさかとは思うけど、最初のでも美味しかったから礼は要らないとか、そういうこと?」
 礼が要らないという理由が思いつかないので、リコはあり得ないことを例えに出してみる。
 確かに帰宅時には復活していたが、日向は最初に作った火神の指導無しバージョンのカレーを完食後に廊下で倒れ、その後の試食会に参加できないほどだったのだ。
 我ながら、自分の料理が与えた破壊力に驚きである。
 調理室を出て行くあの背中は格好良かったし、自分を思いやってくれた日向の優しさには思わず惚れ直してしまうが、いくらなんでも無理のしすぎだとつくづく思う。
 気を遣わせた挙げ句に完食させたこと、でも食べてくれたことは嬉しかったのでお礼を言っているのに、何故いらないと言われてしまうのか、リコには皆目見当も付かなかった。
 受話口から日向が何かを言い淀んでいる空気が伝わってくる。
 幾ら待っても返事は来ず、電波の状態でも悪いのかとリコは携帯の液晶を確認するが、しっかり三本立っている。
 もしかして、向こうの電波が調子悪いのだろうか。
「ちょっと日向君、聞こえてる?」
 ああ、と反応があったあと再び幾分間を置いてから、日向が話し始める。 
「あー。だからさ、俺が言いたいのはそういうこっちゃなくって」
「何よ」
「俺はただ、リコの作ったもんだから全部食った。それだけだ」
「え――ちょっと日向君それどういう」
「じゃーな」
 こちらの言葉を遮って、ぶっきらぼうにそう一言残し、電話は一方的にぷつっと切れてしまった。
 普段ならばすぐにかけ直すところなのだが――今のリコはそれどころでは無い。
 胸が激しく高鳴る。珍しくというか、かなり久々に名前で呼ばれたのもあるのだが、その後に放たれた言葉の衝撃が相当な物だった。
 風呂に入って汗を流した後だというのに、全身が熱く火照って、じんわり汗が滲んでくるのが自分でも判る。
「……今のって、……え?」
 期待――してもいいのだろうか。それとも、日向なりにまた気を遣ってくれただけなのだろうか。
 真意は日向しかわからない。
 知りたいならばメールで聞けばいいのだが、リコの思考はそこに至るまでの冷静さを保っていなかった。
 ――もっとも、思い至ったとしても聞けるとは限らないのだが。
「何なのよ、まったく…………もう」
 手近なクッションを引き寄せたリコは、それをぎゅっと抱きしめた。
 誰も見ているはずがないのに、なんだか恥ずかしくなってクッションに顔を埋めてしまう。
 顔が熱くて、何故だか判らないが、涙が出てきそうだった。
 そのままベッドの上でころんと転がったリコの耳には、日向の言葉が延々とリピートされていた。
タグ:日向×リコ
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