2010年09月29日

青い鳥壊して(火黒)

折り畳み先は女性向の表現が多く含まれます。
18歳以上の方のみご了承のうえご覧下さい。「……散らかってるけど」
 常套句で無人の部屋に誘い入れる。言うほど散らかってはいねえつもりだけど、何事にも几帳面なこいつから見たら汚え部屋かもしれない。
 廊下らしい廊下もない、玄関に入るとすぐ部屋が見える1DKユニットバス付。収納もあるし、高校生が都心で一人住むには十分贅沢な部屋、らしい。
 アメリカと比べちゃ不味いんだろうが、俺としては家賃と広さがつりあってない気はするんだがな。
 と、そのへんに若干の不満はあるものの、シンプルに白い壁と白い天井、大き目の窓も南に向いていて採光も良いこの部屋自体に不満はない。
「そうでもないですよ。思っていたよりは」
 つけたばかりの蛍光灯が、チカチカと瞬いてから部屋と俺たち二人を照らす。
 興味深そうに部屋を見渡しながら、黒子が靴を脱ぐ。いちいち「お邪魔します」なんて言うあたり本当に几帳面だ。
「思ってたよりはって、どんな部屋想像してたんだよ」
「足の踏み場もないような」
「いくら一人暮らしでもそれはねえよ」
 まがりなりにも一人暮らしをさせて貰ってる以上、いつ親が抜き打ち部屋チェックをしに来てもいい程度には片付けている。
 もっとも、汚すほど物がある部屋じゃないってだけかもしれない。キッチンやバスに最低限の生活必需品は揃ってるが、私物っつー私物はあまり置いていない。
 そもそも俺は部屋がごちゃごちゃしてるのはあまり好きじゃない。机には携帯の充電器、それに教科書とノートがあるだけ。ベッドと小さめのテレビがあって、カーペットにバスケットボールが転がっている、見ようによっちゃ殺風景な部屋だろう。
 脱いだ制服の上着をハンガーにかけていると、後ろで黒子が呟いた。
「部屋っていうのは、住人の精神構造を表しているそうです」
「へえ。んじゃ、この部屋をお前はどう見る?」
「ボクは心理学者じゃありませんから、わかりません」
「……お前な」
「ただ、これだけは感じます」
 話を振っといて判んねえのかよ──そう言おうと思ったが、まっすぐこちらを見あげる黒子の視線に、俺は思わず言葉を飲み込んだ。
「温度のないこの部屋へ、一番最初にボクを入れてくれた。火神君の心に初めて入ったのはボクなんでしょう?」
 射抜くような黒子の視線に対しyesともnoとも答えられず、湧き上がる衝動のまま俺は黒子を抱きしめた。
「ああ。お前はこの部屋に入れた最初の客だ」
 間違っていない。
 俺は嘘を言ってはいない。
 少なくとも、恋愛感情って意味ではその通りだ。
「いいよな?」
 抱きしめたまま耳元に唇を寄せると、黒子の体から震えが伝わってくる。
 返答を聞く間もなく舌先を耳の奥へと滑らせ、わざと水音を立てると黒子から今まで聞いたことのないような甘い声音が吐息混じりに漏れた。
 もっとその声を聞きたくて耳に歯を立てて食むと黒子がしがみついてくる。これまでもじゃれあいの中で敏感な反応だとは思っていたが、ここまで感じやすいとは思わなかった。
 唇を滑らせて首筋に舌を這わせ、軽く吸い付いて紅く痕をつけた。
 蛍光灯に照らされた、黒子の白い肌に浮かぶ火傷の様なキスマークが征服欲をそそる。
「火神……君、せめて、シャワー……っ」
「お前の味がするからこのままでいい」
 体の力が抜けていく黒子の体を片手で抱きしめるように支えながら、もう一方の手で黒子の顎を持ち上げる。
 頬を紅潮させた黒子の、潤んだ瞳の色気にあてられる。こういう経験はまったくないって言ってたから無自覚なんだろうが、マジなんなんだこの艶っぽさ。
 ま、それがかえっていいんだが。
「すげえ可愛い」
「可愛いとか言わないでください」
「しょうがねえじゃん、事実なんだから」
 少し不満げな様子で小憎らしいことをいう唇を塞いだ俺は、黒子の唇を割って中へと侵入った。
 入れた瞬間黒子の肩がびくりと震えたのが見える。
「んっ……ふ」
 今まで舌を入れたことはあったが、ここまでしたのは初めてだ。
 ぎこちなく逃げる黒子の舌を捕まえて、良さを教えるように絡める。歯列をなぞり、口腔を余すところなく舌先で撫でてやると、最初は及び腰だった黒子も積極的に舌を絡め始めた。
 ──やべえ。これだけでイきそうなくらい、イイ。
 黒子の口内から唾液が溢れるのが勿体無くて、唇を離してそれを舐めとると、すっかり息を荒げた黒子が、俺の胸に頭を預けた。
「火神君。一つだけいいですか」
「何だ」
「これは、火神君にとって大切なものなんですか?」
 丁度黒子の頭がある辺り、首から垂れ下がるチェーンに通ったシルバーリングを片手で弄びながら、ゆっくり顔を上げた黒子がじっと俺を見つめる。
 それにまつわる由来を語ろうと思えば語れる。別にやましい内容じゃない──そう判っていても、俺の口は何故か言葉を発することが出来なかった。
 なんと答えたものか迷っていると、微笑んだ黒子が先に口を開いた。
「火神君も、聞かないでくれたんです。だからボクも聞きません」
「黒子……」
「ただそれなら、これだけはボクにも言わせてください。……火神君の中にいるのは、ボクだけでいいと」
 潤んだ瞳に火の灯った、挑戦的な視線。
 ああ、そうだ。この一見無気力おとなしそうに見えて、案外好戦的なところがあるこいつに俺は惚れたんだ。
 同時に、このリングに嫉妬してくれていることが嬉しかった。
 本当にやましい気持ちがあるわけじゃないんだが、この顔をまた拝むためにあえて事情を言わないままでいるのもいいかもしれないなんていう、意地の悪い考えも浮かんでしまうほど、黒子の表情は綺麗だった。
「上等だ」
 返事とともに軽く唇が触れるキスをした俺は、首にかかっていたチェーンを外して机の上に放り、黒子の体を横抱きにかかえた。
「軽いな」
「火神君の力があるだけです」
 そのまま仰向けにベッドへと下ろすと、黒子の表情が強張り、緊張が走る。
 初めてなんだし当然か、と俺は黒子に覆いかぶさると片手で黒子の制服のボタンを外しながら、しっとり汗ばんだ額に口付けた。
「俺もヤるのは初めてだから上手く加減できるか判らねぇけど、優しくするから」
 小さく頷いて僅かに口元を緩めた黒子が、身を任せるようにゆっくり瞳を閉じた。
タグ:火神×黒子