2016年05月02日

【第93回フリーワンライ】恋は罪悪 RO生体 ラン→セイ前提、フラメル&ランデル

Twitterにてフリーワンライ企画様(@freedom_1write)が主催なさっていらっしゃる「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」の第93回にて出されたお題のうち、「恋は罪悪」を使用させて頂きました。RO生体の四階メンバー、フラメルさんとランデルさんの会話。ラン→セイが前提となっており、またフラメルさんは脳内鯖設定色がかなり強いです。(公式設定に近い彼は、当脳内鯖ではエミュール君とお呼びしております)ご了承下さいませ。たまにはランデルさんでいちゃらぶ話を書こうかなあ、と思ったりもするんですが、どうにも毎回どこか歪な感じになってしまうような。気がしております。ごめんねランデルさん……!(でも好きです)

本文は折り畳み先で。ワンライの宿命というか、1時間という制限内ではなかなか推敲が足りず、助詞不足や表現被りなどございますが、そのままを載せております。少しでもお楽しみ頂ければ幸いです。



 例えばの話をしようと思う。

 己の存在意義というものについて、人は誰しも一度は思案に耽った覚えがあるのでは無いだろうか。
 そのうち、最も容易に己を表すことの出来る記号が、職業だ。パラディン――その務めは仲間の守護を主とし、敵を阻んで盾となる。時には癒しの光で傷ついた仲間の傷を塞ぐ。パラディンとしての誇りであり、至上の喜びだ。
 だがその為には、己がパラディンとしての使命を全うするには欠かせないものがある。鍛錬、修練、それは無論だ。けれどそれだけでは足りない。最も必要な要素がだ。何だと思う。
 そう、護る為には戦う相手が、盾となるには襲い来る刃が、そして治癒を施す為には傷が。これらは俺がパラディンでいるために、すべて、なくてはならない。
 敵が強ければ強いほど、守護の甲斐があると皆は思う。降り注ぐ矢雨が、数多の魔術が恐ろしいほど盾の意味を知る。刺さる鋼が深く、流れる血が激しいほどに、治癒の価値を知ることになる。
 わかってくれるか。俺にとっての平穏で安泰な生活とは、侵入者あってこそなのだ。でなければ、この場に居る意味が無くなってしまう。それは俺にとって、決して安泰とは呼べない。だから強靱な肉体と技を備えた侵入者達が、三階という大きな壁を突破し、この四階まで脅かすようになったことは、脅威どころか歓待すべきだと考えている。
 そうしてやってきた侵入者達との戦いで、俺は皆の為ならば、幾らでもこの身を投げ出そう。侵入者の前に立ちはだかり、神の代行たる鉄槌を容赦なく落とすだろう。精神を極限まで削ってでも、大切な人の傷を癒すだろう。この世界に、大切な人の心に、己という存在を刻む為に。


「……で?」
 言葉が途切れたタイミングで問いかけを促し、至極何でもないふうに、フラメルは目の前のティーカップに手を伸ばした。話を聞くうち、カラカラに乾ききった喉を、琥珀の飲み物が温かく湿らせていく。ほうっと人心地着いた気がした。緩む気持ちに、自分が随分と緊張していたのだと実感する。
 話に一区切りが着いたことで、目の前の男も同様に茶を飲む。美味いなとお褒め頂いた言葉も、穏やかな笑みも、常となにも変わらない。いつもの、ランデル=ロレンスだ。で、あるはずだ。
 ただ――この男が見せたほころびが、やけにフラメルの肝を冷やす。何も変わっていないように見えるからこそ、厄介だ。話の最中、つうっと背に伝い落ちた汗は、決して気の所為などでは無い。
「で、と言われても。これが君の質問に対する答えだ、フラメル。……いや、理由かな」
「わざわざ三階に出向いてセイレンとの見廻りを希望し、侵入者達と戦ったことの?」
「ああ」
 そうして侵入者と対峙し、奴等はセイレンに深手を負わせた。多勢に無勢な状況だったのもあってランデルに非はなく、お陰で助かったいうのは、当のセイレンからの言葉だ。
「苦情を聞くのは俺なのだけど?」
「苦情が? セイレンは気にするなと言ってくれたが」
「そりゃあ、彼の性格ならそう言うだろうね。苦情は残り五名からだよ。奴等とまみえた時点で状況は宜しくなかったのだろう? 危ないと思ったのならすぐ呼んで欲しかったと、異口同音で頂いている」
「それはすまなかったな。俺がそうしなかった理由は、述べた通りだ」
「……それは、よくわかったよ」
 はあっとフラメルは深く息を吐いた。
 深く想っているセイレンのことを治癒したかったのだろう。三階には治癒のスペシャリストであるマーガレッタがいる。彼女が早々に来てしまっては、願いを遂げられない。だから、すぐには呼ばなかった。全ては、自身の存在意義と想いの為に。
 とはいえ、ランデルの行為自体は何も間違っていない。侵入者達を歓待すると言っても、気持ちだけだ。別にわざわざ誘い込んだり呼んでいるわけでは無い。攻撃してくるのはあくまで侵入者。対峙しているとき、ランデルは本気で奴等を排除しようと心を砕き、仲間を護る。そこに一点の曇りもない。
 だからこそ、難儀だ。結果的にセイレンは深手を負ったが、ランデルが抱いている感情を、悪意と言い切ってしまうことは出来ない。
 言葉に詰まっていると、ランデルが微苦笑を浮かべて肩を竦めた。
「だいたい、そんな苦情もいつもは俺が聞いているんだ。偶には役割を変わってくれても良いだろう」
「ま、ね」
 本来リーダーであるフラメルに代わって、ランデルが他階との遣り取りや周回の持ち回り順など、実質的な役割をこなしているのは事実だ。そこを突かれると何も言えないので、フラメルは早々に話を切り上げる。
「とにかく、話は理解した。俺からは何も言わないよ。ただ――まあ、程々にね」
「善処する」
 頷く表情こそ真面目だが、実際はそんなこと出来るなら最初からこんな話を自分にしないだろう。
 冷静沈着、そして敬虔な聖騎士をこうも狂わせてしまうとは、随分と厄介な獣を飼っているとは思いも寄らなかった。これが静謐な狂気というものか。
 恋は罪悪、か――先人の言葉に、フラメルはそっと胸の内で嘆息した。
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