2015年12月01日

キャラメリゼ・キス――(RO生体3Fハワエレ)

連続投稿失礼致します。原稿の合間ですが、某方へのお誕生日にSSを書かせて頂きました。某様、改めましてお誕生日おめでとう御座いました! 

RO生体工学研究所より、ハワードさんとエレメスさんです。時間軸は生体獄の直前辺り。

カトリんとマガレさんと共に、LoVAコラボであちらにも出張している二人ですが、長身の彼等が動いて喋っているこの事実に感動しかありません。スペックの関係で自分のPCではプレイ出来ないのが悲しいですが、出来るようになったら是非、プレイしたいです。
そしてROはアニバーサリーもおめでとうございます! 昨晩INしてカウントダウンをしようと思っていたところ、13thアニバーサリー!の瞬間に鯖缶するというミラクルに泣きました。あああ動画撮ってたのにーとがっくりしたり。ROは様々なコンテンツがあって、更にどんどんアプデがあるため、まだまだ楽しみ尽くせていないので、マイペースですがまだまだ遊ばせて頂ければと思います。生体万歳!

そんな感じで、本文は折り畳み。
改めまして記載致しますが、自分の書く生体工学研究所の彼等は、全て脳内鯖設定となっております。公式からの詳細な設定が発表されるより以前から生体のお話を書いていたこともありますが、RO公式やLoVA公式による設定や口調等、異なる場合が御座います。ご了承のうえお進み頂ければ幸いです。



「……ッハ、ざまぁ、ねえ……なあ」
 ぐらりと身体が傾ぐまま、冷えた壁に背を任せる。注意深く周囲を観察する瞳は決して生気を失っていない。
 が、傷を負った身体は強がりを知らない。残酷なほどに正直だ。四肢から力が抜けたハワードは、床まで一気に腰を落とした。臀部を強かに打ち、鈍い音が衝撃に弾ける。
「あー。今回はマジ、疲れたわ」
 へばった心身とは裏腹に、口調だけはいつもの調子で、ハワードはぼやく。
 本当にこのところ、侵入者達のレベルが上がった。以前とは桁違いといっていい。あまりに高い侵入頻度と突破率に、レッケンベルの上層部も流石に危機を覚えたらしい。どうやら近く自分達の再調整が行われる、という話を聞いた。
 自分達の身体を玩具のように扱う彼等の思惑など、ぶっちゃけ知ったこっちゃない。生命研究だの神に近づく為だのと、ご大層な名目を掲げた実験などクソくらえだ。
 けれど。それで仲間の傷つく頻度が下がるというなら、是非も無い。むしろ、強くするなら何でも良いからさっさと好きにすれば良いとすら思う。大切な仲間が、こんな――ヘルヘイムの扉を開きかけるような傷を負う前に早くしろ、と。ハワードは心中で唾棄した。
 はぁ、と。削れた命の欠片が混じった、徒労の息が零れたそのとき。ふと、不規則な足音を鋭敏な聴覚が拾う。まさか侵入者の追加かと、緊張が走ったのは一瞬だった。すぐに足音の主を聞き分けたハワードは、彼が無事だったことに先ず安堵する。予想の通り、マフラーをたなびかせながら息せき切って現れた影に、驚かすなよと困ったように眦を下げた。
「――ッ……おいハワード!」
「よう、エレメス。そっちは上手く片付いたみたいだな」
「人のことを気にしている場合かっ」
「気にして当然だろ。お前に傷を負わせたってんなら、無事に帰す気はねえし」
 何処に逃げようと地の果て迄でも追いかけて、八つ裂きにしても飽き足らない。不敵に言って、にやりと口角を吊り上げる。
 と、エレメスの両肩が脱力し、がくりと落ちた。
「なに、あまりの格好良さに惚れ直した?」
「……お前のアホウさ加減に呆れているだけだ。そのずたぼろのなりでよくもまあ、そこまで吼えたものだな」
「言うだけならタダだろ」
「有言不実行は格好付かないだけだ。蝶の羽やワープポータルで研究所外へと逃げた奴を追う手段が俺達にあるというなら、是非聞かせて貰いたい」
「ははっ、それを言われちゃ返す言葉はないな。まあそこは、そんだけの気概があるっつーことで」
 苦笑いを浮かべて肩を竦めると、肩胛骨あたりがつきりと痛む。鍛冶屋の命ともいえる腕は辛うじて庇ったが、代わりに背中のダメージが増えてしまった。痛みを表情には出さずに居た、つもりだったのだが、この聡い恋人には見透かされたらしい。
 一際大きなため息を吐いたエレメスが、厳しい表情で己の真横にどっかと座った。
「……珍しく、手酷いやられようだな」
「大したことないさ。これくらい、いつものことだろ」
 流石に肩を竦めるのは止め、代わりに飄々と言ってのけたのだが、エレメスの顔は更に渋さを増す。
「やはり、お前の指示を聞くべきではなかった」
「んだよ、不満か? こんだけ上手くいったのに」
「ああ不満だらけだ」
 強く握りしめた拳で膝を強打し、エレメスが悔恨に口の端を歪ませた。腕を伸ばしてその頬に手を添え、柔らかく笑んだハワードは、ゆっくりと首を振る。
 今回、戦闘の最中ハワードは、エレメスにWisを飛ばした。敵の数があまりに多い。このままではジリ貧になる。連中の主力であるルーンナイトを上手く引きつけて分断したい。残った面子は自分が引き受けるから、危険を任せて悪いが、奴をどうにかして欲しいと。
 作戦は上手くいった。信頼を託した恋人は、刃を切り結びながら巧みにルーンナイトを誘導し、一対一に持ち込んだうえ見事退けたのだ。そのお陰で、ハワードは残存戦力と心置きなく戦えた。ひとつ誤算だったのは、連中の一人、アークビショップがかなりの手練だったこと。自慢の槌で幾度打ち払おうとも、その都度、的確な支援で周囲をカバーしていた。あれは敵ながら天晴れな動きだった。立っていられないほどの疲労と傷は、大体あのアークビショップが居たからだ。確かに手強い相手だったが、逆にあのアークビショップをルーンナイトから引きはがしたのは大正解だったとも言える。
 そう説明したのだが、納得のいかない様子でエレメスは「ならば」と低く唸った。
「ハワード。お前は、俺が歩くのもやっとの様子でよたよた戻ってきたならこの作戦、後悔しなかったか」
「……痛いとこ突いてくるんじゃねえよ」
「ハッ、そうだろう。さっきの言葉を、そのまま返す。例えルーンナイトとの戦いで疲労していようが、俺は今すぐ連中を追いたい。お前にこれほどの傷を負わせた者を何処までも追い詰め、切り刻んでやりたい気分だ」
「……なあエレメス。出来ない事を口にすんのは、格好悪いぜ?」
「煩い黙れ。貴様に言う資格はないだろうが」
 鋭い語調はいつになく荒い。それだけ、エレメスの立腹具合が知れた。
 だがそのキツイ一言も、今のハワードには心へ溶けて染みいる傷薬だった。裏の意味を汲み取れば、優しさのエッセンスしか感じられない。エレメスが腹を立てている矛先は、自分を傷つけた侵入者。そして、エレメス自身だ。それが証拠にハワードの手はずっと、振り払われないままなのだから。
 素直じゃないな、と。耳の後ろへと指を伸ばし、二度ほど頭皮を撫ぜてから、そのまま後頭部を胸元へと引き寄せる。長く垂れた髪の影で見えないが、ジャケットの裾を強く握られた気がした。
「エレメス。俺は、ここにいる」
「見ればわかる。殺しても死ぬような奴じゃ無いのもな」
「それでも。心配させて、悪かった」
「……わかっているなら自重しろ。傷だらけのお前を見た俺が、どれだけ、の、思いをしたとっ……」
 喉奥を幾重も絞ったような掠れた本音の叫びに、ハワードの気まずさは最大値を軽くオーバーランする。大切な者への攻撃には敏感だが、自身のこととなると腕以外の怪我に無頓着なのは、悪い癖だと解っている。それがこうして、エレメスの気を揉んでいるのも。
 胸の軋む思いをさせている罪悪感と、深い愛故に苦悩してくれているという仄暗い喜びとが、ハワードの中でない交ぜに心を昂揚させていく。
「エレメスっ……!」
 背が痛むのも構わず、引き寄せた身体をぎゅうと抱きしめた。悪かった、と。心からの謝罪をもう一度囁く。小さく頷いたエレメスが、ゆっくりと顔を上げた。交わる視線が瞬間、時を止める。互いの吐息が掛かる距離に、思わずハワードは喉を鳴らした。据え膳食わぬは男の恥、だがここはまだ安全な場所と言い難い。果たしてTPOとは、と。少々の葛藤を経て、ハワードはへらりと笑う。
「なあエレメス。それ、イイってことでOK?」
「わざわざ確かめるな、ムードの無い」
 くすりと笑んだエレメスの手がハワードの鎖骨に添えられ、そっと唇が重なる。眠る欲をかき立てられるような深いものでは無く、優しく触れるだけのキスは久しぶりだった。愛しい相手と触れ合っていると、すぐに先に進みたくなるのだから仕方ない。だが今は、こんなときはガキのような可愛いキスも良いかもしれない――などと思っていると不意打ちに唇を舐められた。
 驚いて目を開けると、唇を離したエレメスが、今度は自身の唇を舐めていた。う、とハワードは口内に呻きを隠す。その姿はやたらエロティックで、キスより余程ハワードの劣情を煽るのを、エレメスは気付いていないのだろう。
「……お前の血は甘苦いな。昨日のお茶で出た菓子のようだ」
「キャラメリゼだっけか。マーガレッタが新作だって言ってたな」
「ああ。甘さの中に苦みが混じって、なかなか美味だった」
「そりゃ、俺とのキスも美味いって言ってる?」
「――そ、そういう意味ではな、んッ」
 話を途中で割り、唇を重ねたハワードは、閉じられた口唇の隙間から易々と侵入し、深く舌先を差し入れる。一瞬の抵抗はあったものの、エレメスはすぐ応えてきた。互いの唾液を飲ませ合うほど絡ませてから、ハワードは満足げに笑った。
「血の味なんかなくっても、お前とのキスいつも甘くって美味い」
「……馬鹿めが」
「そいつに関しちゃ、幾らでも罵倒してくれて良いぜ。俺がエレメス馬鹿なのは今に始まったことじゃないだろ」
 もう一度小さく、馬鹿めと呟いたエレメスの、ふいっと背けた横顔は隠しようも無いほど紅い。
 おう、馬鹿だなと。だらしなく頬を緩めたハワードは、やや強引にこちらを向かせたエレメスと額を合わせる。
 先ずはマーガレッタのお説教をくらって、治癒を受ける。それからセイレンにお小言を二、三貰って、奴らについて報告。セシルとカトリーヌには心配かけたことを謝って――エレメスの顔を、今以上に紅潮させるのはそれからだ。
「……ハワード。何を考えている」
「お前をどうやってどろどろに甘やかそうかって」
 ちゅ、と。前髪を上げて額に口づけると、エレメスの顔に血が昇っていく。
 図らずも、それはハワードがたった今想像していた顔色に、よく似ていた。
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