2015年08月04日

【C88新刊情報】RO生体ハワエレ本「不帰の砂」※追記有り

きちんとした脱稿はまだなのですが、先んじてC88の新刊情報を載せさせて頂きます。

※追記有り

不帰の砂 (A5/54P/400円/R18)

写真表紙4色フルカラー印刷、本文書籍用紙/厚口用紙モノクロレーザー印刷のコピー本。
生体工学研究所、ハワード×エレメス本です。ハワードさんが記憶喪失になってしまうお話。全体的にシリアスですが、一応ハッピーエンドです。


「ああ。この仕事、確かに請け負った。出来は期待してくれてイイぜ。改めて、俺はハワード=アルトアイゼンだ。――そんで、あんたの名前は?」


目を覚ますと、そこには見たことのない景色が広がっていた。
自分の知る常識が全て過去になった世界にいきなり放り込まれ、戸惑う自分の頼りはただ一人。
――かつての客である、エレメス=ガイルだった。

こちらの本はR18の展開を含みます。サンプルは以下、折り畳みです。


また、当スペースにてハワエレアンソロジーを委託させて頂くことになりました。素敵な作家の皆様による渾身のハワエレ本です。畏れ多くも、自分も寄稿をさせて頂いております。ハワエレワールドをご堪能頂ける素敵な一冊となっておりますので、御手にとって頂ければ幸いです。

もう一冊、委託をさせて頂くことになりました。別ジャンル(刀剣乱舞)になりますが、wordsworth*(ワーズワース)様の空想原型読本をお預かりさせて頂きます。世界背景の原型を空想した考察本となります。麗しい鶴丸さんのイラストが目印です。ご興味のあります方はどうぞ、御手にとって頂ければ嬉しい限りです。

(15/08/04時点 脱稿時に再度、最終版をUP致します)







 昼間から酒の臭いをぷうんと纏わせた、目深なフードでも隠しきれない長髪が印象的なアサシンクロスだった。
 日常から飲んだくれてなきゃ、こうまで臭いはしない。
 だが、布の隙間から垣間見える、しなやか且つ鍛えられた筋肉は本物だ。加えて、瞳の奥に潜んだ殺気は恐らく、触れたものを全て斬り捨てる酷薄さを備えていた。
 目が交った瞬間、身体の中を、言葉に出来ない何かが走り抜けていくというのは、なかなか鮮烈な体験だ。
 まるで全身が鋭利な刃物で出来ている――鑑定ってわけじゃあないが、それがこいつの第一印象だった。
 
 
 
 何も聞かずに、これと同等以上の武器が欲しい。造れるだろうか――と。
 よく使い込まれたダマスカスが数本、俺の前に置かれた。
 それじゃ拝見、と一本ずつ手に取り、検分する。全部星入り属性付き。入った銘は、今は現役引退済みの有名ランカーのもので、文句無しにイイ品だ。角度を変えて灯りにに翳すと、僅かにこびりついている黒みがかった朱が、ぬらりと鈍い光を帯びる。
 嗚呼、こいつは人の脂と、血の臭いだ。
 流石、アサシンクロスの使っていた武器と言うべきか。
 ――さて。ここでガラっと話は変わる。誰もが思って当然のことだが、俺は仕事に対して、返される笑顔が好きだ。
 ワザワザ材料一式揃えて依頼してきた駆け出しに、武器を作って暫く後。俺の銘入り属性武器のおかげで冒険が格段に楽しくなりました、なんてWIS貰うとか。
 こっから先は保証外で破壊もあり得ると、先に念押ししたうえで、貴重なレベル4武器の強化が最高クラスまで成功して。俺も驚いたが、はしゃいだ依頼人が喜びのあまり、地面三十センチくらいマジ飛びしたり。
 ご近所のマダムから年季の入った包丁渡されて、切れ味抜群まで研いだ御礼に、ウマい自家製シチューをご馳走になったこともある。
 千差万別、十人十色。全部が全部、仕事に対してイイ反応を貰えるわけじゃあないが。偶にでも、ンなこと言って貰えりゃもう、鍛冶屋冥利につきるってもんだ。こっちが礼を言いたいくらい気分がスカッと良くなって、そんな日は決まって一人、酒場で祝杯をあげる。
 そういう心が温まる喜びってのはいいもんだし、否定する気は毛頭無い。
 でも、だ。俺が鍛冶師として本当に求めてるのは、違う。
 先ず第一に、武器ってのは極論、命を傷つけ、奪うモノ。そいつが絶対のアイデンティティだ。身を護る為、私利私欲。目的は違えど、武器の役割は変わらない。
 ごく例外が鑑賞用に儀礼用か。需要があるのは理解してるが、飾るだけの芸術品なんて真っ平だ。
 俺が造りたいのはそんなんじゃない。
 力、技、精神。ヒトの持ち得る可能性を、俺の手で極限まで引き出す。無機物である武器と、意志を持った有機物である人が融合し、一体感すら得られるような極上品。
 最高に最強で最凶な、命を殺す為の得物だ。
 そう、例えば――心まで鋼で出来ている、プロフェッショナルな暗殺者にこそ相応しい逸品。造り出すのは俺という人の身なれど、そいつが持ち、使えばたちまち神器に迫る、そんな武器を俺は造ってみたかった。
 目の前の男は、確かに一見、飲んだくれにも見える。
 が、その腕は一級品に違いない。そして、一介の鍛冶屋が抱くには大それた野望を叶えてくれるかも知れない人材だと、俺の直感が告げていた。
 造れるか、と。
 再度問われた俺は、身の内に沸き上がる期待と昂揚感を隠し切れず、答える前に、ふはっと息を吐いた。
 喉が震える。久々に本気を出せる仕事が来やがった。いや、もしかしたらだが、こいつは生涯最高の仕事になるかもしれない。そんな予感が高鳴る胸を掠めていく。
「ああ。この仕事、確かに請け負った。出来は期待してくれてイイぜ。改めて、俺はハワード=アルトアイゼンだ。――そんで、あんたの名前は?」







 酷く、頭が重かった。こめかみから水平にざっくり刺さった錐が、脳を貫通しているんじゃないかというくらい、ズキズキ突き刺すような痛みが絶え間なく襲ってくる。
 こんな状態が延々続くなら、いっそ殺してくれと叫びたくなる。そう思って声を出そうとしたが、声帯がまともに働かない。
 結局言葉は音にならず、寝台らしき場所に身体を横たえていた男――ハワード=アルトアイゼンは、気怠げに熱い息を吐き出した。
 今更のように気付いたが、周囲に人の気配を感じる。それも一人では無く、複数人の。確認の必要を感じたハワードは、軽く身動いで身体に覚醒を促す。
「ねえ。目、覚ました。……っぽい」
「えっ? ホントだ! ねえちょっと、マーガレッタ! ほら! 起きたってば!」
「待って下さいな。セシル、すみませんが様子を診たいので、場所を譲って頂けますか?」
 未だ痙攣するまぶたを薄く開くと、水中で目を開けたのかと錯覚するくらい、世界がぐらぐら揺れていた。ぼやけた視界で辺りを認識する前に、真横から響いた甲高い女性の声が耳を刺す。一体この場に何人居るのか解らないが、とりわけ目立つこの声は、冗談抜きに鼓膜が痛む。
「ねえエレメスってば、ほらっ。起きたよ!」
「……見れば判る」
「んもう、なに突っ張ってんのよ! ここのとこ碌に寝れもしないで、一番心配してたの知ってるのよ! なんで部屋の隅っこ陣取ってるわけ? さっさとこっち来なさいよっ! ちょっとセイレンも。何かいつもと変わらないし、もう少し喜んだらどうなの!」
「いや、セシルの目から見て俺が落ち着いているように見えるなら、それはマーガレッタの治癒能力を信じていたからだ。フラメルにも良い薬を貰ってきていたしな。……だが物事に絶対は無いし、こうして目覚めてくれて、これでもとても安堵しているよ」
「なら、良いけど。――ほらエレメスはやくっ」
「……だから別に、此処からでも様子は見え、て、待てセシル、マフラーを引っ張るな、首が締ま、るっ!」
「ねえセシル、エレメス。目覚めが嬉しいのは私も一緒ですけれど、出来ればもう少しだけ声のボリュームを抑えて下さいな」
「あっ、ゴメン」
「……俺は、別に」
「ふふっ、セシルの気持ちは判りますけどね。エレメスも今日くらいは素直になっても良いのではなくて? ――なんて、余計な御節介ですわね」
「セシルってば、泣いてる。はい、これで拭いて」
「べ、別に泣いてなんかないっ……でも、ありがとカトリーヌ。ホント良かった……すごく、心配だったんだもの」
「今回のようなケースは初めてでしたものね。セシルの動揺も無理ないのは解ってますから。とはいえ、まだ予断は許しませんけれど。――あら、すみませんでしたわね、つい放って煩くしてしまって。でもそれだけ皆、貴方が目覚めたのが嬉しいんですわ。それで、気分は如何ですか? どこかまだ、痛んだりは」
 不意打ちで顔に近づいてきた手を、反射的に払い除ける。
 ぱしん、と。ハイプリーストの白い手を打ち据えた音が、清寂を連れてきた。
「…………え?」
 零れたハイプリーストの声は驚きに満ちていた。
 他にはハイウィザードにスナイパー、ロードナイト。少し奥にアサシンクロス。その皆が、一様にぽかんと口を開け、呆気にとられていた。
 その間抜けな光景から、少なくとも自分に対する敵意や害意は無いと見て良いかもしれない。が、油断は禁物とハワードは気を引き締める。警戒は幾らでもするに越したことはない。
 置かれた状況は未だいまいち把握出来ていないが、確実に解っている事実が一つ、あるからだ。
 慎重に上半身を起こしたハワードは、寝台に手を着き、ずり、と僅かに後ずさる。
「――ドッペルゲンガーが複数、か……剣士以外にも存在して、おまけに会話もするなんて、聞いたことありゃしねえが……つか、ここはどこなんだ。ゲフェンダンジョン、じゃなさそうだが……?」
「ゲフェンって……ちょっと、ねえ。あんたどうしちゃったのよ。頭でも打った?」
「待てセシル――近づくな。様子が変だ」
「変って、何言ってんのよセイレン。確かに、なんか言ってることおかしいけど。寝惚けてるだけじゃないの? それに、近づくなってどういう」
「――セイレンの言う通りにして、セシル」
「カトリーヌまで、どうしたっていうのよ」
「いいからよくみて。こんな怖い目……私は、知らない」
「ですわね……まるで、侵入者を見る時のそれです」
 自分を中心にした、異様な雰囲気を肌に感じる。張り詰めた空気が全身を刺すようだ。先程までの和気あいあいとした和やかな雰囲気ならばまだ、不可解ではあっても危機は感じなかったのだが。
 やはり、あの手を叩いたのは早計だったろうか。おまけに、不透明な状況につい、不安を口にしてしまった。
 せめて心に収めておけば良かったものを、と。己の不用意な失言に、ハワードはチッと舌を打つ。
 ともかく今は、何が起きても対処出来るようにしておかねば。視線だけで素早く辺りを見回し、武器になりそうなものを物色する。が、当然というか、残念ながら簡素な寝台まわりには、硬いものなど見当たらない。わかったのは、シーツの程良い滑り具合だけ。あえて言うなら、この枕を投げれば牽制程度にはなるかもしれない。そのくらいだ。残る武器はこの肉体だが、平常時ならばともかく、今の自分は接近戦ができる身体状態とは思えない。
 幸い、周囲は未だに困惑している、らしい。これが敵意に変容する前に、なんとか状況打破が出来ないか。そんなことを考えていると、ツカツカ足音を立て、一人がこちらに寄ってきた。
 ちらりと目線をやる。ここまで沈黙を守っていたアサシンクロスだった。明らかに不機嫌そうに此方を睨みつけ、鋭い瞳の眦を更に吊り上げる。
「おい、いい加減にしろハワード。寝起きで頭が呆けたにしても、随分とタチが悪いぞ」
 あれだけハッキリ足音を立てるなんて、アサシンクロスらしからぬ所作――と思うより先に、ハワードは彼の言葉に引っかかりを覚えた。眉を顰め、首を傾げる。
 今、この男は何と言った。
「お前、どうして俺の名前を知ってるんだ」
「はあ?」
 怪訝に寄せた眉間の皺には、どこか見覚えがあった。確か――つい最近のはず。
 あ、と。思わず声が漏れた瞬間、ハワードの脳内に、あの日のことが鮮明に蘇る。
 モロクの乾いた風に乗って響いた、よく通る涼やかな声音。脳内の記憶領域を刺激されたハワードは、その男を穴が空くほど凝視した。
 依頼が成立したあと、取られたフードの中から現れた顔と。悋気を起こす寸前を思わせる眼前のそれ。雰囲気は多少違うので若干自信がない。だが目鼻口と、一つ一つのパーツが他人じゃないレベルで一致する。
「――すまない。お前は……エレメス=ガイルか?」
「そうだが、何を今更」
「だよな!」
 男の首肯を見て、彼にだけ警戒を解いたハワードは瞳を輝かせた。かくりと肩の力が抜け、自然と頬が緩む。知った顔を見つけた安堵に、胸をなで下ろす心地だ。
「なんだよ、やっぱりそうか。いや悪い、なんというか以前と印象が違ってたから、自信なかったんだよ。依頼人の顔を間違えるなんざ、露店商としちゃ失格だからな」
「ハワード、貴方っ……」
 それきり言葉を失って息を呑んだハイプリーストが、両手で口を覆う。添うように佇んでいるロードナイトも、随分と深刻な表情でぎゅっと拳を強く握りしめていた。
 何に狼狽しているのか、どうして深刻な雰囲気なのか。今のハワードに、彼等の思いは推し量れない。
 だから――この場で唯一知った顔に向けて、ハワードは問うた。目覚めてからずっと欲しかった答えを、この男がくれることを願って。
「なあ。それで、ここは……結局何処なんだ。後ろにいる半透明のそいつらは、DOPの亜種か? というか、お前もなんかDOPっぽく見えるけど……もし敵だってんなら、どうして襲ってこない」
 水を打ったような静けさの中、表情を無くしたアサシンクロスの喉が、ごくりと鳴動する。何かを発しようと僅かに形作られた彼の唇は、そのまま動きを止めてしまった。
 青ざめたスナイパーがふらりと立ちくらんで、とすんとハイウィザードに寄りかかる。何とかスナイパーを支えたハイウィザードの手も、がくがくと震えていた。
 そうか――ハワードは理解する。
 自分にとっては、状況の説明を求めるのは必要且つ当然だった。だが今のはきっと彼等に、彼にとってなにか、致命的な質問だったのだ。その理由までは、解らないけれど。
 アサシンクロスを含む五対の瞳に、痛ましい視線を送られているのが、その証拠と言えた。
 凍り付いた空気の中ハワードは、口の端を噛むアサシンクロスを見つめ、貰えないだろう答えをただ、待っていた。
 
<続く>
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