2015年07月20日

【第1回主花ワンライ】 お題:花村陽介

Twitterにて主花版深夜お絵かきSS書き60分間一本勝負様(@syuhana_1draw)が主催なさっていらっしゃる「主花版ワンドロ・ワンライ」。主旨はこちらに詳しくありますが、簡単に言えば、直前に出されたお題を使って一時間制限で何か書きましょう、というもの。

フリーワンライ・緑高版ワンドロワンライのテンプレ文章をちょこっと弄った文章で失礼致します。
先日こちらの企画の第一回が開催されまして、参加させて頂きました。年齢操作がありますのでご注意下さい。

最近、色んなワンドロワンライが開催されていて、大変目の保養ですね……! 原稿の合間、時間が合うときに参加させて頂いております。
主花ワンドロワンライ、最初のお題はずばりそのまま花村陽介。第一回開催は6/22、つまり陽介の誕生日でした。主催者様の愛が伝わってくるようで、参加者様のイラストや漫画、SSにも愛が溢れて幸せでしたね……!

相変わらずですが、直前のお題から内容を考え、時間内に書き上げるというのは難しいですね。時間内に推敲・読み直し出来なかったので、助詞不足や表現被りが多々になりますが、あえて投稿時そのままを載せております。

そんな感じで続きは折り畳みです。



 六月二十一日、午後二十三時五十分。腕に巻いた時計で時刻を確認してから、俺は携帯を取り出した。
 画面に表示されているのは、誰よりも大切な人の名前だ。
 花村陽介。生涯の親友にして、青臭い高校時代を共に過ごした、相棒。同性であることは十二分に承知しているが、高校時代からの密かに片想いしている相手に、俺は電話を発信する。
『もしもし、相棒?』
 如何にも、何でも無いって風な声だけど。ほぼワンコールで出てくれた時点で、俺からの電話を待っててくれたのが感じられる。そんな些細な事でも心が浮き足立った。高校二年からの付き合いだというのに、何時までも胸がときめくのは、どうしてなんだろうか。
「お疲れ、陽介。テレビの音が聞こえるってことは、もうバイトは終わってる?」
『おー、もうアパートだけど。こんな夜中にどした?』
「白々しいこと言うなあ、ワンコールで出てくれた癖に。毎年、日付跨いですぐに祝ってやってるもんな。俺からの電話、イイ子で待ってたか?」
『るせぇよ俺は犬か!』
「ほー。そういう口利ける立場かな陽介は。――ちゃんと明日の休みは取れたんだろうな?」
『うっ……スミマセン取れました』
 電話の向こうで、図星を指されて拗ねたり、俺の言葉に焦ったり、俺がその場に居ないのに頭を下げているのが丸わかりだ。きっとくるくる表情を変えているだろう、そんな様子すら愛しい。普段人当たりの良い仮面を付けている陽介が、俺の前では一喜一憂、素の心を見せてくれるのが酷く嬉しいのだ。
 だからこうして意地悪いことを言いたくなってしまう。今日は流石に、控えようと思っていたんだがな。
「それなら宜しい」
『なあ、お前未だ怒ってんの?』
「さあな。別に、根に持ってなんかいないぞ。いつもバイトで忙しい陽介を労おうと、人がせっかく温泉旅館を手配したっていうのに、お約束のように急なバイトを頼まれて断れなくて、あっさりドタキャンされたことなんて、ぜーんぜん気にしてないからな」
『してんじゃねえか! ……いや、さ。本当、悪かったと思ってるって』
「冗談だって。怒ってないよ、本当に。だってちゃんと明日は空けてくれたんだろ。俺がお前の誕生日を祝いたいだけなんだし、その為に改めて予定君貰ったんだから、それでチャラだよ」
『……ほんとにかー?』
 きちんと説明したというのに、陽介の声はまだ疑心暗鬼に駆られている。しまった、どうやら少しばかり弄りすぎてしまったらしい。
 些か反省はする。でも、ちょっとくらいの嫌味を言うのくらいは許して欲しいものだ。
 良い親友で居続けるか、その線を越えるか。散々悩んで、やはり大学卒業前に告げようと決心した。逃げ場を立つ意味でも、気合いを入れて話題の温泉旅館を一泊二日手配した、その前日になってやっぱり行けないと言われたのだ。陽介の間の悪さは今に始まったことでは無いので、すぐに諦めも付いたが。
「ほんとほんと。それよりさ、陽介にちょっと聞きたいことがあるんだけど。ジュネスってお取り寄せのカタログ出してたよな」
『ん? ああ、あるぜ。何か最近美味しいお取り寄せがプチブームらしくって、催事もかなり成功してっからな。なんだよ、興味あんの?』
「まあな。気軽に頼めるみたいだから、菜々子に何か送ってあげようかと思って」
『おお、菜々子ちゃん喜ぶと思うぜ! なんなら明日、カタログ持っていこうか。うちにあるぜ』
「いや、いいよ。重いだろうし」
『それもそうか。にしても、ほんと流行ってるよなーお取り寄せ。お前もなんか頼んだことある?』
「まだ無いけど、うちに取り寄せたいってものならあるかな」
『へー。なになに』
 興味津々に聞いてくる陽介の声が、耳に心地良い。もしこのまま会話を続けたら、これを永遠に失ってしまうかもしれないのだ。
 カンスト済みの勇気が一瞬、怖じ気づいたように萎みかける。
 だが男たるもの、一度決意を固めた事を、そう簡単に変えるわけにはいかない。というか、ここで引き下がっては恐らく、俺は一生打ち明けることが出来ないような気がするのだ。
 此処が人生の分岐だと己の心に言い聞かせ、こほん、と咳払いを一つして、俺はゆっくり息を吸い込んだ。
「――花村陽介」
『……え?』
「俺がこの手に取り寄せて、欲しいと思うのは陽介。お前だよ。好きだったんだ。高校の時から、お前のことだけ、今までずっと」
 ピピピッ、腕時計が電子音を鳴らす。
『ちょ、いまなんか音が』
「ハッピーバースデー、陽介。それから……もし、俺に応えてくれるなら、このドアを開けて欲しい。五分だけ、待ってるから。じゃあな」
『ッ、ちょ、待てあいぼ』
 みなまで言わせず、俺はその場に――陽介が一人暮らしをするアパートの扉に寄りかかった。
 このドアが開くとは、正直思っていない。鍵が解かれるわけは無い。男なんてノーサンキューで、小西先輩へ惜しみない慕情を注いでいた陽介が、幾ら慕ってくれているとはいえ俺に応える想像が出来なかった。
 それでも、言ってしまいたかったのだ。ここまで彼女を作ってこなかった陽介だが、八十稲羽での立ち位置から解き放たれたうえにあの性格とルックスは、当然モテる。いつ誰のものになってしまうかわからない。
 行動を起こせば良かった、と。そんな後悔はしたくなかったのだ。
 ぼうっとしているうちに、あっという間にもう四分が経っていた。少し早いが、望みはもう無いだろう。
 用意してきたプレゼントを玄関のノブにかけようとした、そのとき――いきなり扉が開き、腕を引っ張られた。
 ばたん、と背中の後ろで扉が音を立てて閉まる。呆気にとられ、状況が追いついていない俺の脳は、近所迷惑では無かっただろうかと、見当違いのことを考えていた。
「え、あ――陽介?」
「この、ばかっ! ぜんぶ投げっぱで勝手に切るんじゃねえ!」
 真っ赤な顔で怒鳴られてもあまり迫力が無いというより可愛いだけなのだが、と思うより先に、思い切り強く抱きつかれる。身長差の関係上、俺の肩口に顔を埋め、ぎゅうと背中に手を回しているのは紛れもなく陽介で。これは夢じゃ無いんだろうか。
 俺も好きだった――と。
 いつもは元気印と言わんばかりにはつらつとしているのが信じられないほど、か細く聞こえた陽介の声にも、やっぱり現実感が無い。
 もう一度言って、と我が儘を言うと、更に強まった腕の力が、俺に夢では無いのだと教えてくれた。
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