2015年07月07日

緑の願、銀の星――(黒子のバスケ 緑高)緑間さんお誕生日おめでとうです!

そんなわけで表題通りですが七夕です! 緑間さんHappyBirthday!
昨夜はケーキでなく、水ようかんと水饅頭を頂きました。今夜はケーキも良いなと思いつつ甘い物が続くので悩ましい感じ。でも多分買ってきます。

お祝いに書いたお話は、社会人シリーズの二人が過ごす、いつかの誕生日。こちらだけでもお読み頂けます。実は去年書きかけだったものをリライト致しました。某アプリの話は当時の実話だったりします。どう見てもチャリアにしか見えなかった件。

続きは折り畳みで。



「……高尾。お前はさっきから何をやっているのだよ」
 ――今日は久しぶりに、二人きりでゆっくり過ごす夜だった。
 明日明後日と、二日分の有休をもぎ取る為に、ここ暫くはかなり忙しかった。理由は明白、今日の日付は七月六日。明日は緑間の誕生日で、前々から高尾が計画してくれていた、郊外の温泉旅館に行く予定だ。
 後顧の憂いなく休めるよう、緑間は人事を尽くして業務をこなし、高尾も残業申請した時間ギリギリまで、がっつり仕事をしてきた。
 その為少し、いや結構、今日は帰宅が遅くなってしまった。互いに夕食を摂っていなかったので、軽く夜食でもと缶ビールに幾つかつまみを作って、久々に二人の食事を終えたのがついさっき。
 今は気に入りのソファに、並んで座っている。豆から挽いた珈琲を飲み、他愛ないことを語らう。些細で、ありきたりな日常。けれどたまらなく幸せな、恋人とのひとときだ。
 それがあまりに緑間にとって居心地良かったから、普段なら別にそんなことくらい、いちいち気にしないのに。
 話の途中でスマートフォンを手にし、小さな画面ばかりを見ている高尾が、少しだけ気に障った。
 人と話をしながら携帯を弄るのはマナー違反だろう、と。先程からひたすらスマートフォンを操作し続ける高尾へ、緑間は苦言を呈してしまったのだ。
「へ?」
 案の定。こちらを向いた高尾がきょとんと、豆鉄砲を喰らった鳩宜しく、目を瞬かせた。
「……なんだ、その顔は」
「いやあ?」
 否、鳩ではなく鷹かと。緑間がそう思い返す間も無く、涼しげな猛禽の目元が、にやあと細く笑んだ。
(――う)
 たかが無機物への嫉妬を見透かされた居心地悪さを誤魔化すように、緑間はカップの中身をぐっと飲み干す。いつもは美味しいブルマンの苦味と酸味が、やたら舌に強く感じられた。
「ふふーん」
「なにが言いたい」
「んー? なんか真ちゃんの声、っつか言い方がご機嫌ナナメっぽいから」
 空のカップをソーサーに置いた緑間は内心、迂闊な発言をした自分に舌を打つ。
「気の所為だ」
「またまた。俺の目、欺けると思ってる?」
 イキイキとした高尾の瞳が悪戯にキラキラ輝き、揶揄の色に満ちている。普段は大変好ましく思っているのだが、こういうときは至極厄介だ。、緑間はぐ、と苦虫を噛んだ。高尾が発する次の言葉が、容易に想像ついたからだ。
「なあ真ちゃん、もしかして寂しかった?」
 何がそんなに嬉しいのか。ぱちんと器用に片目を瞑った高尾が、さも楽しげに茶化してくる。
 良い玩具を見つけたと言わんばかりの、悪童の目だ。いや悪童では花宮か。意外なところから、随分懐かしい名前が出てきた。そういえばあの周辺、霧崎あたりの消息をとんと耳にしていない。同じ東京の高校とはいえ、元々そこまで交流はなかった相手だ。加えて彼等とは学年も大学も違ったので、当然と言えば当然なのだが。
(それよりも今は高尾だ) 
 閑話休題を挟むがごとく、斜め方向へと思考が逸れた。逃げ場を探して寄り道した思考を、真っ直ぐ軌道修正し直して、緑間は青色の溜息を吐く。
 まったく、こういうときの表情は学生時代と変わらない。出逢った当初、高校時代から高尾和成という男はこうだった。空気が読めて、周りに対する配慮も出来て。たまに粗相や失言もするが、普段が普段なので比較的許される。人と人、場と場を繋ぐコミュニケーションスキルは、緑間の知る人間の中でも随一だ。
 けれどそれ以上に、人を茶化すときは全力で、とことん揶揄って遊ぶ。
 だから高尾に弱みを見せるというか、何がしかの揺らぎを察されてしまったら。それが深刻で無い場合に限り、からかわれるのは必定だ。
 恋人としての年数は浅くとも、友人としてはだいぶ長い付き合いになる。だから高尾のそういう性分を、緑間は十分に解っていた。いた筈だったのだが、どうしても言わずにいられなかった。
 我慢ならなかった。高尾の興味を自分から奪う存在が、気に入らなかったのだ。
 たかが電子機器にまで嫉妬。度を超えた自分の狭量さに、苦笑せざるを得ない。
「なーあ。真ちゃん?」
 取り敢えず、ヘタに言い訳するのは止めだ。余計なボロが出る。そう思った緑間は、唇をへの字に曲げ、高尾を軽くねめつけ「煩い」と一蹴した。
(寂しかったか、だと。そんなの――そうに決まっているだろうが)
 胸の奥で、こっそり本音を零す。
 己の感情に対し、素直になる大切さは、ようく知っている。でなければ今頃、緑間の隣は冷たいまま、無人だっただろう。
 だが流石に、高尾の視線が自分に向いていないのが気に入らないという、子供じみた感情を口にするのは憚られた。
 そこに男の見栄もなくはないが、それだけではない。こと高尾に限って、だが。感情の発露をある程度セーブしなければ、と考えてしまうのだ。
 己の感情を素直に吐き出し過ぎて、もしまた暴走してしまったら、自分は再び高尾を傷つけてしまう。この程度で、とは軽く思えない。実際、大仰な話でないのは過去の件が証明している。あの時も切っ掛け自体は非常に些細だった。
 ある一定のラインを超えると、いとも簡単に箍が外れるのを、緑間は自覚している。蹂躙とまでいかなくとも、無節操に高尾を求めてしまう。理無い仲となった今ですら、高尾が許してくれるのに甘え、手酷く抱いてしまうことが、ままあった。
 だから緑間は、涼しい仮面の下で蠢く激情を、常日頃から宥めている。身の内に飼う獣の手綱を、出来るだけ緩めたくないのだ。
「なんだよ。怒った?」
「別に怒ってなどいない」
「嘘つけ、声でわかるっつの。確かにスマホ弄ってたけど、話ならちゃんと聞いてたぜ」
「そういう問題ではないのだよ」
「……悪かったってば。な?」
 言って、高尾がわざとらしく胸にしな垂れかかってきた。ふわり、高尾からシャンプーの匂いが香る。そういえば、帰ってすぐにシャワーを浴びていたのだった。
 指通りの良いさらさらな高尾の髪を、わしゃりと乱雑に撫でた。そのまま髪先を流し、耳の後ろに撫でつけると、高尾がくすぐったげに首を竦める。甘えきった猫のような仕草が、堪らなく愛おしい。
 沸き上がる情動に従い、緑間はもたれ掛かかる高尾の体を強く抱きしめた。
「加減しろよな。苦しいって」
「している」
 これでかよ、と高尾が小さく笑う。
 冷房のよく利いた部屋で、腕の中に高尾の温もりと匂いを感じる。たったこれだけで、イラついていた緑間の気分は、あっさり上昇してしまった。
「機嫌、直ったみたいだな」
「……何故わかる」
「そりゃ、真ちゃんのことですから。つーか、真ちゃんがスキンシップ取りたがるのって、大抵俺が何かに気を取られてる時だし」
「煩いのだよ」
 否定はしない、というより出来ない。そもそも嘘は好まないし、吐いても九割九分、看破されるだけだ。
 ぎゅう、と腕の力を込めることで、緑間は無言の抗議を表した。
 くすり、と。顎の下で、高尾が口の端で笑った気配を感じる。
「なんか真ちゃん、今日は甘えたさんだなあ」
「悪いか」
「んー? いやちっとも悪くねーよ。むしろ今日は誕生日イブなんだし、もっとワガママ言って、甘えていーんだぜって思っただけ。――あ、えっちなコトは自重してくんないとダメだけどな。折角一緒に有休とったんだから。明日出かけられなくなったら勿体ねーし」
「楽しみだな」
「おう。温泉とか久々だからちょー楽しみ。イイとこ予約したから、期待して良いぜ。奮発したからなー、部屋に露天家族風呂もついてっし、ゆっくり出来るぜ」
「家族風呂……お前、何と言って予約を取った」
「へ? 大人二人だけど。あ、ちゃんと男二人って言ってあるから食事の量多めになってるぜ。そこ喫茶もやっててさ、和風スイーツにも定評あるんだよ。名物らしいから、ぜんざい頼もうな」
 すりすりと鎖骨に頬擦りする姿は、よく懐いた猫を思わせる。喉仏を指先でくすぐると、「んん」と甘ったれた声音が漏れた。
 う、と緑間は呻いた。可愛い。このうえなく。
 三十路手前の成人男性に対する形容詞で無いのは、重々承知している。けれど緑間の目には、可愛いとしか見えなかった。
(……これで自重しろと言われてもな)
 先程よりも更に深い、悩ましげなため息が、緑間の口端からほうっと漏れる。
「真ちゃん、手つきエロい」
「お前に言われたくない」
 なんだそりゃ、と高尾がけらけら笑う。
「ったく、無自覚でフェロモン撒くなよな」
「……だから、それもお前にだけは言われたくないのだよ」
 緑間からすれば、高尾こそ自分を誘うフェロモンの塊だ。それで自重しろと言われても、まったくもって説得力がない。例えるなら、寝るなと言っておきながら、子守唄を口ずさむような矛盾だと思う。
 だって、だ。
 先程の、鼻にかかった高尾の声音。あれ一つで、緑間はあっさり『その気』になってしまえる。
 というか、既になっている。ぶっちゃけ、腰の辺りがずくんと重い。そして熱い。覚えのある甘い疼きが、腰からじわじわ這い上がってくる。
 下肢の中央はまだ、一応、あからさまな形を成していない。だがこのままでは、しっかりくっきり、部屋着のズボンを持ち上げてしまうのも、時間の問題だろう。
 それだけ緑間は高尾のことを想っているし、心も体も、常に欲しているのだ。恋人として共に居て、既に半年以上経つ。高尾和成という存在が自分に対し、どれだけ性的な威力と魅力があるのか。いい加減、判っていそうなものなのだが。
(この調子で、会社でも無意味に色気を振りまいているのでは無いだろうな)
 自覚があって、自分に対してワザとやっているならともかく、あまり無自覚でいられると、余計な心配まで芽生えてくる。
「訂正。今の真ちゃん、手つきだけじゃなくて、目も息もエロい」
「誰の所為だと思っている」
「俺が真ちゃんに甘えていーぜって言った所為?」
「……甘えて良い、か。実際、猫のように甘えてきているのは、お前の方だがな」
「にゃはははー、そんにゃことにゃいにゃ――なんつって」
 にぱ、と効果音がつきそうな高尾のスマイル。おまけに招き猫のようなポーズに、緑間はぐら、と目眩がした。まるで世界が一回転したような錯覚を覚える。
(本当に、此奴はっ!)
 本人は恐らく、ネタのつもりだったのだろう。何度も言うが自分達は三十路手前。そんな男が口調にあざとく可愛く、猫らしさを表現したところで、気味が悪いだけだ。
 けれどそれが恋人ならば、話は別である。
 元々、緑間は可愛らしいものに弱い傾向がある。卵が先か、鶏が先か定かでは無いが、でなければおは朝のラッキーアイテムでファンシーな小物が指定されたとき、持ち歩くなど出来ない。
 そこに、例えふざけてだろうが、にゃんにゃん口調の恋人を前にしたら――結果は明白だ。
(い、今のはクリティカルヒットだったのだよ……!)
 わなわなと手が震える。全力の愛しさが喉元ギリギリまでこみ上げて、溺れてしまいそうだ。このままでは息が詰まって呼吸が出来なくなる。胸いっぱいに広がった、溢れんばかりの愛情を、今すぐ高尾に注ぎ込みたい。色んな意味で。
「真ちゃん?」
「……高尾」
 一旦体を離して真正面を向き、指の腹で頬を撫でた緑間は、じっと高尾の顔を覗き込む。
 明日の予定など知ったことか。例え無自覚だろうが、挑発してきたお前が悪いのだよ、と。
 心の中で悪い顔をしながら緑間は革張りに手を着いて、ぎしりとソファを揺らす。
 誕生日なのだから多少の我が儘が許されると言ったのは、他ならぬ高尾だ。その権利を存分に有効活用するべく、このまま高尾をソファに押し倒し――かけたその時。
「あ、そうそう。猫といえばさ」
 押し倒そうとしたタイミングで、高尾がひょいっと身体の向きを変える。肩すかしを食らい、何が起きたか理解できない緑間の眼前に、スマートフォンの画面が突きつけられた。
 ぱちぱち、二度ほど瞬きをして、画面を見る。その向こうで、高尾がにっこり笑んだ。
「これ。さっきやってたヤツ」
「猫……か?」
「そ。箱庭育成系のアプリ。こないだ俺、実家行ったっしょ。そんとき妹ちゃんに頼まれてさ。友達紹介するとボーナス 貰えるから、やんなくってもいいから入れてって。基本無料だし、なんたって妹ちゃんの頼みだし、その場でインストールしたんだわ。そしたら、なんとなくハマっちゃって」
 誰かを招待すると、それに応じてボーナスが貰えるとは成る程、ユーザーを増やすには手っ取り早い、よくある手段だ。
 見せられた画面の中では、何匹もの猫が忙しなく動いていた。畑を耕し、家畜を世話し、時間経過で生産されるそれら一次産業の品々を、更に加工し食品を製造、販売する。得られた資金で更に生産効率をあげる。
 回転する産業の縮図がそこにはあった。工業は皆無だが、なかなかよく出来ている。
 全体的にファンシーな雰囲気が漂っていて、観ているだけでもほのぼの和む。ゆったりほのぼのとした世界に、なんとなく先程の勢いも、毒気も抜かれてしまった。
「ふむ。ようするに生産シミュレーションゲームか。見目はいかにも女性が好みそうだな」
「そ。ちょこまか動くの、なんかカワイーじゃん?」
 確かに猫達は愛らしい。とはいえ、こんなものに高尾の関心を取られたうえに据え膳お預けを喰らったのは少々、いや結構、納得いかないが。
「本当にお前は細かいゲームが好きだな」
「いーじゃん、これ無料アプリだし。課金も一応出来るけど、マイペースにやる分には必要ないから、金かかってないぜ」
「確かに。トレーディングカードのように、無尽蔵に金は掛からないな」
「それ言うなって、今はやってないんだし。つか、無尽蔵って。あの頃だって、俺ちゃんと自制してたっつーの」
 どうだかな、と肩をすくめた緑間は、再び高尾を腕の中に招き入れる。背後から肩をぎゅうと抱き込んだ。
「しょっちゅう人をその手の店に連れて行ったのは何処の誰だ」
「だって真ちゃん、かに座が一位の時ってマジすげー運良いし。お願いしない手は無いって」
 高校時代、緑間は高尾に付き合ってカードショップによく行った。特におは朝でかに座が一位の時は、必ずといって良いほど連れて行かれた。そして「真ちゃん、こん中から好きなパック選んで!」と請われたものだ。
 たかがそれだけで高尾が喜ぶなら安いモノだ、と。あの頃は高尾への想いを自覚していなかったが、嬉しそうにはしゃぐ姿をみて、悪い気はしなかった。もっと言えば、かなり気分が良かったのを覚えている。
(……懐かしい)
 今でも高尾の部屋には、あの頃蒐集したカードが詰まった、分厚いファイルが何冊か鎮座している。それには貴重なレアカードが何枚か入っていて、中には一枚の相場が五桁だか六桁だかするものもあるらしい。価値のよく解らない緑間には、何が良いのかサッパリだが、とにかく凄いというのはわかる。趣味の世界は奥が深い。
「ま、それはともかく。このアプリ、こないだから七夕のイベントやってんだよ。一日一回降ってくる星を割ると、ランダムで島を飾るアイテム貰えんだけどさ。期間限定で、彦星と織姫出んの。俺まだ彦星っきゃ持ってなくて。さっきはさ、早く織姫こねーかなーって星が落ちてきてないか、チェックしてたんだよ」
 ほら、と。再度、見せられた画面をよくよく眺める。
 先程は気付かなかったが、広場の中央に七夕飾りの笹と、彦星の衣装を纏った白猫の像があった。ポツンと一人佇む姿は、なんとなく寂しい。確かにこれは、早くパートナーを添えてやりたくなる。
「明日は七夕だっつーのに、彦星ぼっちのままとか、かわいそーじゃん」
「その時は雨が降ったと思えばいい」
「七夕の雨って催涙雨だっけ? いや確かに明日は天気悪いっぽいけどさ。それなら尚更、ゲームの中でくらい逢わせたげたってよくね?」
「存外ロマンチストなことを言うのだな。というかその星というのは、これでは無いのか」
「あ、ホントだ。さっき無かったのに。いつの間に」
 話しているうちに、落下してきたのだろうか。緑間が指さす先に、キラキラ輝く星があった。
 んじゃー早速、と高尾が画面を操作する。すると手の空いていた猫が一匹駆け寄ってきて、星へとつるはしを振り下ろした。
「星をつるはしで割るのか。なかなかシュールだな」
「そ。ま、見た目が星なだけで、降ってきてんのは隕石だし。ほら、プレゼントボックスが出てきたっしょ?」
 幾度目かの破砕音の後、画面の中央に赤いリボンの箱がぽんっと出てきた。わくわく、少年のような顔で高尾が画面をタップする。
 包装が解け、箱から飛び出てきたのは――。
「……あれ。彦星?」
「の、ようだな」
 広場にポツンといた姿と、全く同じ格好の猫だった。
「えー、これ彦星のあとは織姫がくるんじゃないのかよー。妹ちゃんのとこでちゃんと揃ってたから油断したわ。まさかのランダムとはなあ」
 ぶー、と高尾が唇を尖らす。普通に考えれば、高尾の言うことは尤もだ。牽牛星に添うのは織女星と相場が決まっている。
 が、しかし。緑間は高尾の肩に手を置いて、ゆっくり首を振った。
「何もおかしなことはない。飾ってやれ」
「は?」
「七夕に逢引するのが、彦星と彦星でも良いだろう」
 二人の間を遮る流れを越え、愛する人と共に居たいと願う恋人達。世間では牽牛と織女、つまり男性と女性が添うのが当然だ。自分と高尾が深く慈しみあい、どれだけ真剣な想いを通わせていたとしても、同性同士というだけで、常識は決して自分達を祝福してくれない。たとえば、旅館の宿帳に、自分達の関係を記載できないように。
 常識外の歪な関係を理解してくれる、自分の友人達が特異なのだと知っている。
(こんなのはただの電子データなのだよ。そんなの、わかっている)
 ただそれでも。出現がランダムだというゲームの仕様で、高尾のところに彦星が二つ揃ったのが、偶然でも嬉しかったのだ。
「俺達みたいに?」
「ああ。俺達のように」
 一を聞いて十を知る、は高尾の十八番だ。言わんとしていることを察してくれたらしい。
 エース様の仰せのままに、と笑んだ高尾が、ひょいひょいと手際よく画面を操作した。あっという間に、広場にもう一体の彦星を置く。ファンシーな姿をした二体の彦星が仲睦まじそうに並んだ。
「なあ真ちゃん。俺達は年に一回なんて言わず、ずっと一緒に居ような」
「……勿論だ」
 顔を近づけると、高尾の瞳がそっと閉じられる。
 手に握られていたスマートフォンを取り上げ、熱い唇を重ねたまま。今度こそ緑間は高尾の躯をソファへ沈めた。


 
 ――後日。
「なー真ちゃん、なんかまた彦星にゃんこがきたんだけど。合わせてコレで五個目ってどーゆーことよ。妹ちゃんとこはちゃんと、一発で揃ったんだぜ? 俺ンとこには織姫来ない運命なんかなー」
「先に言っておくが、飾るなよ。……いや、飾ってやっても良いが。他の彦星と同様、先の二つとは離れた場所にな」
「へいへい、わーってるよ。つーか、なんか俺この彦星にゃんこが先輩達に見えてきたんだけど」
「……俺にもそう見えてきたのだよ」
タグ:緑間×高尾
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