2015年06月10日

【第43回フリーワンライ】身空の夢 黒子のバスケ 緑高

Twitterにてフリーワンライ企画様(@freedom_1write)が主催なさっていらっしゃる「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」の第43回にて出されたお題のうち、「身空の夢」を使用させて頂きました。

今回も黒バスから緑高です。職業パロのようでそうじゃない感じ。どんな世界に居てもあの二人には一緒に居て欲しいんですという願望を一時間で詰めたらこんな感じになりました。
相変わらず時間が足らず、ワンライ内で推敲・読み直し出来なかったので、恥ずかしながら助詞不足や表現被りなのをそのまま載せております。

そしてこそっと。6/10、緑高の日おめでとうございます!
いつまでも、ずっとずっと、大好きです!!!
UP予定だった作品もあるんですが、どうしても書き上がりませんでした……そんな風に書きかけな作品が結構有るので、どうにか消化しきっていきたいです。7/7までに書きあげられたら良いなあ。

「っしゃー、出番終わった。あー喉渇いた」
 控え室に飛び込んで第一声、テーブルに用意されていたミネラルウォーターのボトルを手にし、高尾はそれをラッパ飲みする。喉を通る冷水が程よく心地良い。
 続いて入って来た緑間がぱたんと扉を閉めた――までは、いつも通りだったのだが。
 金属が重なる音を、高尾の耳が拾う。くるりと首だけ振り返ってみると、案の定、緑間が施錠をしたようだった。
 ここは局が自分達に用意した控え室だ。余程のことがない限り部外者が入って来る心配は無い。この部屋の鍵をかけるということはつまり、自分達に関係する人達にも入ってこられたくない、のだろうか。
「高尾」
「なに真ちゃん。クッソ真面目な顔しちゃってんだけど。鍵まで閉めたってことは、いきなし反省会でも始めちゃうわけ? 俺、今日は歌詞も間違えなかったし、踊りも完ペキだったと思うけど」
 そうではない、と緑間がゆっくり、どこかぎこちなげに首を横に振る。
 茶化したつもりが却ってただならぬ空気を呼んでしまったようで、凝った雰囲気に、高尾は思わず息を呑む。
「先日の返事だが、すまない。俺には、お前の想いに応えることは出来ないのだよ」
 この世の終わりとは、かくも唐突に訪れるのだろうか。
 くらり、貧血を起こしたわけでもないのに、一瞬目の前が真っ暗になったように感じた。
「……あ、それね」
 昨日の別れ際、高尾は積年の想いをほぼ一方的に告げたのだ。
 その恋心を、あまりにもあっさりと拒絶された衝撃はかなりの勢いで高尾の胸を抉ったのに、何故か顔に浮かぶのはへらりとした笑顔だった。
 もともと、ダメだと解っていたのだ。伝えることでユニット解消の可能性も踏まえた、ただ言いたかっただけの自己満足。
 幾ら親友とはいえ、男同士の恋愛がそう簡単に叶うはずも無い。ましてや緑間真太郎という男は高尾が知る限り、仲間内で最も筋金入りのモラリストなのだから。
 ましてや自分達の生業は駆け出しのアイドル。せっかく固定ファンが付いて、人気が出始めたところなのだ。余計なスキャンダルは御法度で、禁断の恋愛沙汰なんて以ての外なのは、高尾もよく判っている。
 それでも伝えてしまったのは――これ以上、黙っているのが辛かったのだ。互いにピンの仕事が増えてきて、一緒に居られる時間が減って。だからこそ、逢えるときに跳ねる心臓を抑えきれなかった。
 あえて何事もなかったように、高尾は肩を竦める。
 「ははっ、いきなりあんなこと言って悪かったよ。なんかもう最近いっぱいいっぱいでさ。こないだなんて真ちゃん、ラブシーンありの仕事承けちゃうじゃん。いや仕事来るのはいいことなんだけど、黙ってらんなかったんだわ。しゃーないしゃーない。無理なのはわかってたし?」
 道化に徹するようにふざけて言うと、緑間の眉間に皺が寄った。
「仕方ない、とはどういう意味だ」
「言葉通りだって。そりゃ、このギョーカイそういう関係の人結構多いけどさ。男同士なんて真ちゃんには無理っしょって話。キモがらせてゴメンな。もしもうユニットなんてやってらんねーってんなら、社長には俺から話つけとくから。ま、もしこんな俺でも続けてイイって言ってくれんなら、真ちゃんの懐の深さに甘えちゃうけどな」
「……高尾。俺がお前に応えられないのは、お前が男だからとか、そんな理由ではない」
「は? なに、他に理由でもあんの?」
「お前の将来を、台無しにしない為だ」
 ステージ上の相棒であり、心を預けた親友がいつもより一際硬い声音で、だがきっぱりと言い切る。自分を見つめる瞳は変わらず穏やかなのに、きつく引き結んだ緑間の唇から覆せない意思を感じ、高尾は奥歯を噛みしめる。
「……へぇ。俺の将来、な」
 そうだ、と。至極真面目な顔で頷く。
「言っておくが、お前が気付かなかっただけで、俺はずっと前からお前を愛おしく思っていた。ただ口にしなかったのは、そうすることでお前のアイドルとしての寿命を縮めるどころか、息の根を止めてしまいかねんことを憂慮したからなのだよ」
 大人しく話を聞いていた高尾の片頬がひくひく引き攣る。
 生真面目な男だとは解っていた。だが、まさかこんなところまでとは、高尾の予想を超えていた。
「っざけんじゃねえよ!」
 借り物の衣装が皺になるのも構わず、高尾は緑間の胸ぐらを掴んでぐいと引き寄せた。至近距離に迫った眼鏡の向こうで、切れ長の瞳が珍しくまん丸を描いている。
「なんだよそれ。俺の為を思ってだあ? んなの、真ちゃんに振られる方がよっぽど息の根止まるっつーの! つかテメェも男なら好きな奴に告られて身引いてんじゃねえよ! 手伸ばせよ! 好きだってのが嘘じゃねえんなら、俺に手、伸ばして、くれ、よっ……!」
「泣くな、高尾」
「な、のっ……真ちゃんの所為だっつーのっ……」
 涙声で絞り出すように言い募ると、緑間の腕が背中に回される。
「悪かった。……お前の言う通りだ。俺には、世間のハードルを越える度量が、お前を巻き込んでしまう勇気が足りなかっただけだ」
「……わかりゃ、いい」
「もう迷わない。高尾、俺はお前を――」


 なに。真ちゃん。聞こえないって……もっかい、聴かせてくれよ――。


「――お。高尾」
 ゆさゆさと肩を揺さぶられ、ゆらりと意識が覚醒していく。
 非現実感が抜けきらない頭をもちあげ、ぼやけた視界で辺りを見回す。夕陽の差し込む見慣れた部室。壁に掛かった時計が指す時刻は既に、閉門間際だった。ふと横を見れば、秀徳高校の制服を着た緑間が、自分の肩に手を置いている。
「……真ちゃん? なんで、高校ンときの制服なんか……」
「やっと起きたか。だから先に帰っていろと言ったのに、こんなところで寝ていたら風邪をひくのだよ」
 ぱちぱち、と瞬きを繰り返す。
 今まで見ていたものが夢と知った高尾は、再び机に突っ伏した。緑間とアイドルの身空で、しかも――あんな内容だなんて。恥ずかしすぎて顔を上げられない。
「どうした」
「……んー。そっか。俺、真ちゃん待ってたんだっけ……生徒会終わったの」
「ああ。お前こそ、監督に貰った映像を見ていたのだろう。他校の研究は捗ったのか?」
「ワリ。途中から夢の中だったわ。つーか半分も見てねえかも」
「疲れているのだろう。部の引き継ぎをしたばかりだというのに、お前に色々任せてしまっているからな。悪いと思っている」
 居眠りに対して呆れられたかと思いきや、気遣いの台詞を貰ってしまい、余計に居たたまれない。
「ははっ。真ちゃんは生徒会もあるんだし、しょうがねえって。俺なら何とかなるから、気にすんなよ」
「仕方ないなどと言うな」
 眉間に皺を寄せた緑間が、真っ直ぐにこちらを見据える。
「言っておくが、お前が気付かなかっただけで、俺はずっと前からお前を心配していた。ただ口にしなかったのは、そうすることでお前の矜持を害してしまいかねんことを憂慮したからなのだよ。だがこんな風に居眠りをしてしまうほど辛いならば、これからはきちんと言え」
 どうしてだろうか。先程の夢で見た緑間と、どこか姿が被る。
 言われていることは、この上なく嬉しいのに。
 もしかしたら現実の緑間も自分を密かに想ってくれているかも知れない、なんて都合の良いことを考えてしまい、高尾は内心自嘲する。
「……うん。そだな、サンキュ。一緒にがんばってこーぜ」
「ああ」
 いつか、夢の中のように爆発してしまうかもしれない。
 そう遠くない未来を思い、高尾はその日のことを思ってひっそり、溜息を吐いた。
タグ:緑間×高尾
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