2015年03月23日

【第41回フリーワンライ】プレゼント 愛してるの数だけ嫌いになるの 繰繰れ! コックリさん 狸狐

Twitterにてフリーワンライ企画様(@freedom_1write)が主催なさっていらっしゃる「深夜の真剣文字書き60分一本勝負」。主旨はこちらに詳しくありますが、簡単に言えば、直前に出された複数のお題を使って一時間制限で何か書きましょう、というもの。

お約束のようなテンプレ文章でお送りします文頭ですが。
時間が上手く合いましたので、フリーワンライ企画に参加させて頂きました。

今回は繰繰れ! コックリさんから。狸こと信楽さんとコックリさん。狸狐です。
いいですよね、こひな以外には結構ツンだけど、なんだかんだお人好しで絆されやすいコックリさん。そして普段はチャラくてニートでヒモな、呑む打つ買うを体現した放蕩っぷりだけど、実は有能で決めるときは決めてくれる昼行燈な信楽さん。すごく……ツボです。

相変わらず時間が足らず、ワンライ内で推敲・読み直し出来なかったので、恥ずかしながら助詞不足や表現被りなのをそのまま載せております。
そんな感じで続きは折り畳みです。
「ほい、狐。今日も愛してる」
 いけしゃあしゃあと言ってのけた信楽が、そのまま台所に入ってくる。どさり。今のはそれなりの重量が置かれた音だ。テーブルの上には恐らく、今日の戦利品。スロットにでも行ってきたのだろう。元は俺の金で。大事なことなのでもう一度、俺の金で。
「おーい、狐?」
 二度目の呼びかけも無論、後ろを向いてなどやらない。こっちはひがな一日家事をしていて、今も夕食の支度をしてるんだ。時間と金を浪費している奴の、相手をしている暇などない。
 無視を決め込んでいると真後ろに立たれた気配がした。瞬間、ぞわりと怖気が走ったのは、奴が俺の項に息を吹きかけた所為だ。
「何するっ!」
「やーっとこっち向いたな」
 丁度手にしていた包丁を、鼻っ柱に突きつけてやったのに。一切動じず、にやり、してやったりと笑う姿が憎たらしい。
 そこには酒瓶を腰にぶら下げた、いつも通りの着流しスタイルの信楽がいた。相も変わらず、格好だけは決まっている。そこだけは一応、褒めてやっても良い。中身はただのクズだけどな。
「だって、せっかく愛するお前にプレゼントを持ってきたってのに」
「……どうせ元は俺の金でな」
「まあまあ、そこは固いこと言わずに。ほら、狐が喜びそうなもんばっかと引き替えてきた」
 大事なことなのできちんと言ったが、あっさり流され、代わりにずいっと出されたビニール袋には、確かに俺の喜ぶモノが目一杯ぎっしり詰まっていた。そのラインナップが視界に橋に入った俺は、流石にちょっと気になって、ビニール袋に手を突っ込む。
「米、味噌、醤油に味醂……前とは随分違うな。今時のスロットはこんなものまで景品にしてるのか」
「調味料や食料品が景品のとこ見つけたんで、今日は一日そこで粘った」
「別に褒めてないから」
「これでおじさんの海よりも深い愛は解って貰えたか?」
「解るかボケ」
 はっ、と俺は鼻で笑って信楽をねめつけ、戦利品の袋を床に置いた。
 ふざけるな、と心底思う。
 女体化したときは気の迷いというか、心が弱ってた所為か、信楽にときめいてしまったこともあった。
 だがあれ以降、信楽の生活は変わらない。日々毎日、俺やこひなに金をせびっては、宵越しの金を持たない江戸っ子宜しく、すっからかんに遣ってくる。たまに勝ったときだけこうして、おざなりな愛の言葉と一緒に、戦利品という名のプレゼントを寄越してくる。
 そんなのが続いてみろ、夢幻のような淡い想いどころか、百年の恋だって冷めて当然。ギャンブルで勝ったときしか出てこない愛なんて、こっちから願い下げだ。
「あのな信楽。いい加減、そろそろこういう遊びは止めろ。女体化してるならともかくお前、今の俺に興味なんて無いだろうが」
「…………ん?」
「だから。こひなの情操教育にも良くないから、もうこんなのやめっ、んっ……」
 俺の文句は、最後まで言わせて貰えなかった。
 何故なら――強引に上向かされたと思った時にはもう、信楽の顔が間近にあって、避ける隙もなかった。塞がれた唇を離そうと、必死で胸の間に腕を入れて押し返してるが、俺の腰を抱く信楽の力は存外強い。そういえば女体化した俺の躯を軽々横抱きにしていたっけと、この現実から逃避するように思い出す。藻掻いているうちに、完全にホールドされてしまい、すっぽり信楽の腕の中だ。
 唇を割られ、ぬるりと入って来た苦い舌が歯列をなぞったのと同時に、悠久を生きてきて初めて感じる、背筋がすくみ上がるような感覚に襲われて、躯から力が抜けかける。
 態勢が崩れた俺を立て直そうと、信楽の腕が緩んだ瞬間を見逃さず、俺は拘束から逃げた。
「顔、真っ赤だな」
「……っさい! お前なんて大っ嫌いだ!」
 この程度のキスに感じたなんて思わせたら最後、調子に乗るに決まっている。
 思い切り叫んでやってから、ごしごしごしと割烹着の袖で唇を拭って見せると、わざとらしく信楽が肩を竦めた。何か言い返してくるかと思いきや、そのまましゃがんでビニール袋をがさごそ漁る。
「おい。何やって」
「あー、あったあった」
 すっくと立ち上がった信楽の手には、黒い小箱が握られていた。俺の眼前でおもむろに開けられたそこには、放蕩男に似つかわしくないいかにも高そうな石の輝きがあった。
「これは正真正銘、働いた金で買った。安物で悪いけど、俺からお前への気持ち……って奴だ」
 指に嵌められた銀の指輪についている石は、どう安く見積もってもこの家に当てられる一ヶ月の生活費よりも多い。いや、へたすると三ヶ月はくだらない、かもしれない。
「お前の目色に合わせるか悩んだんだが、ここはスタンダードにダイヤかなと、な。ああ、良かった。似合ってる」
「……どう、せ……嘘じゃ」
「信じるかどうかは狐、お前の自由だな」
 そりゃあ確かに信楽はここ暫く、俺に金を無心しなかったが。毎日朝早くからどこかに行っては、今日は負けたと帰宅時は手ブラなことが多かったが。そういうときは、酒の匂いを殆どさせていなかったが。
 まさかまさかと思いながら、一つ一つの小さな事象が、つもりつもって一つの真実を導きだす。
 じゃあ。じゃあ、本当に信楽はこれを自分で働いた金で買って、俺に渡して、それはつまり――。
「俺は、本気だからな?」
 いつの間にやら再び距離を詰められて、耳元へと囁かれた言葉が鼓膜を震わせる。
 そして思う。
 嗚呼。俺は此奴の術中に、まんまと嵌まってしまったかも知れない、と。
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