2015年01月04日

【第2回緑高ワンライ】お題:ファーストキス

Twitterにて緑高深夜の真剣創作60分一本勝負様(@mdtk11)が主催なさっていらっしゃる「緑高版ワンドロ・ワンライ」。主旨はこちらに詳しくありますが、簡単に言えば、直前に出されたお題を使って一時間制限で何か書きましょう、というもの。

と、またも冒頭をテンプレ文章で失礼致します。
こちらの第二回に参加させて頂きました。今回も開始時間が合わなかったので、自分で時間を計りまして一時間。投稿時そのままを載せておりますが……助詞間違いに表現被りは最早お約束。尻切れトンボ感も否めません。一時間って本当に短いですよね。お題発表から開始時刻までが一時間あって、フリーワンライの方より(あちらは22時お題発表の22時半開始なのです)三十分多い分、脳内でのプロットを練る時間は多いのですが、それでもなかなか難しいです。即興とはいえ、もう少し書けるようになりたいですね。

そんな感じで続きは折り畳みです。



 一月四日。三が日を過ぎてしまえば、正月気分などもうどこにも無い。年末から年始にかけて世間が乱痴気騒ぎをしている間も、俺の胸にはウィンターカップの雪辱が常に巣くっていた。昨日までは流石に校門は閉じていたが、今日からは学校の体育館は生徒が自主練で使えるよう、開放されている。管理の為に年明けから出勤している先生方には頭が下がる思いだ。
 お陰でこうして、他の人間を気にせずシュート練習ができるのだから。
「ノルマ達成まであと、もう二籠ほどか」
 練習を始めた時点で籠いっぱいだったボールはだいぶ減ったが、自身に課したノルマには未だ遠い。
 走り込みは毎日怠っていなかったが、シュート練習をするとなると簡単にはいかない。共用施設の体育館やストバスのコートを利用するという手段もあるにはあるが、一人で延々とゴールを占領するのは些か気が引ける。
 特に今は、雑念に侵されている自覚がある。普段ならば何ということも無いのだが、今は他人が居れば容易に集中を乱されてしまうかも知れない。
 あんな――夢をみてしまった所為で。
「………ッ!」
 不意に脳内へ掠った、初夢の光景。集中が乱れ、シュートフォームが僅かに崩れた。
 爪のかかり具合が甘い――今放ったシュートは、入らない。
 案の定、ゴールリングに弾かれたボールが転々と床を転がっていく。行儀が悪いと幼い頃から禁じられている舌打ちをしてしまい、自己嫌悪を上乗せしたところで、体育館の扉がギィと音を立てて開いた。
 午前中の明るい光を背に浴びて、扉に身体を寄りかからせて現れた姿につい、もう一度舌を打つ。
(来たか)
 今日、奴がここに来る可能性があるのは解っていたので、心構えは出来ていたはずなのだが。無駄だと解っていながらも、爆速する心臓に鎮まれ、と命じてみる。
「やっぱ真ちゃんが一番乗りか。練習始めは明日からだけど、ぜってー自主練してると思ったわ」
「……お前も来たのか、高尾」
「そりゃ勿論。やっと学校開いたんだぜ。早くバスケしたくて、身体疼いてしょーがなかったし。真ちゃんだってそうだろ?」
「当たらずといえども遠からずだ」
 近寄るな――と。歩み寄ってくる高尾に対し、口を突いて出そうになった言葉を辛うじて飲み込む。本音ではあるが、本意では無い。
 止めるか止めまいか。考えている間も、高尾はそのまま近づいてくる。これ以上の平静を奪われるのを恐れ、無意識に半歩、足を下げたところで高尾が歩みを止めた。こちらの心境など何も知らず、いつもの軽い調子でへらりと笑う。
「改めまして、明けましておめっとさん。今年も宜しくなー」
「新年の挨拶ならば、既に電話でしただろう。わざわざ日を跨いだ瞬間にかけてきたのは何処の何奴だ」
「それはそれ、これはこれ。年明けて逢ったのは今日が最初だろ?」
 たった今シュートを失敗して転がったボールを、それと知らずに拾い上げ、高尾が片目を瞑る。しかし、この気温下でハーフパンツにTシャツのままとは。更衣室からの移動くらいジャージを着ないと風邪をひくだろうに。
「運動中ならともかく、寒々しい格好だな」
「ジャージもちゃんと持ってきてるって。どうせすぐ暑くなるし、いいじゃん」
 いつものようにボールを投げられ、受け取ったそれを、自然と動いた腕がゴールへ放った。今度こそ、ボールは美しい放物線を描いてゴールリングへ吸い込まれていく。
 シュートに失敗した後というのもあるが、やはり高尾からのパスで放るシュートは心地が良い。「ナイッシュー」と高尾に親指を立てられ、知らぬうちに心身を覆っていた緊張が解けた。解けたことで、自身が高尾に相対し、緊張していたことに初めて気がついた。
 楽になった呼吸で肺から息を吐き、改めて高尾に向き直る。
「謹賀新年。今年も宜しく頼む」
 意識をしないように、出来るだけ平静に答えたつもりだった――が。
「ちょ、新年の挨拶で謹賀新年って実際言うの初めて聞いた!」
 正しく挨拶しただけなのだが、いったい何がおかしかったのか、あまりに豪快な笑われっぷりに苛立ちを覚えた俺は、けらけら腹を抱えて爆笑する高尾の頭をべしりと叩く。
「涙が出るほど笑うことでもないだろう」
「だ、だって、年賀状に書くならともかく、言うのはねーよっ。あー笑った。俺これ新年の初笑いだわ。新春のお笑い番組見てても全然刺さんなかったのに」
「まったくもってくだらない初笑いだったな」
「いやいや、これ笑うなってのが無理だっつの」
「フン。笑いの沸点が低いお前がいけないのだよ。それよりせっかく来たのだから、さっさと練習を始めたらどうだ」
 高尾と普段通りの会話を交わしたお陰で、幾らか調子を取り戻せた気がした俺は、練習を再開すべく籠からボールを取り出す。
 狙いを定め、シュートフォームに入ったところで、高尾が再び口を開いた。
「初笑いっていや、真ちゃん初夢なんか見た?」
「――ッ」
 先程よりも大きくズレた軌道で、ゴール板の角に当たったボールが跳ね返ってくる。
 確かに年始、逢っての話題としてはありがちだが、まさか雑念の大元そのものの話題をこのタイミングで振られるとは思わなかった。ここで落ち着かねば高尾に怪しまれてしまうのだが、不味いと思えば思うほど、動揺が収まってくれない。
 嫌な予感と共に高尾に向くと、訝しげにこちらを見ていた表情が好奇心に染まる。
「なー真ちゃん。どんな夢だったん?」
 にんまりと口元に笑みを刷き、お気に入りの玩具を見つけた子供のようにキラキラと瞳を輝かせた高尾に、俺は深いため息を吐いた。
「何の話だ」
「トボけたって無駄だって」
「…………知らん」
「イイじゃん。どうせ夢だろ? 真ちゃんがそこまで動揺するような内容って、すげー興味ある」
「覚えていない」
「嘘だね。伊達に半年以上も一緒にやってきてないぜ? 真ちゃんが嘘吐いてるかくらい、わかるっての」
 俺の観察眼なめんなよ、と。さも面白げに言ってのける。人の腕をしっかと掴んで、答えが貰えるまで離さないと言わんばかりの様子にうんざりした俺は、肩を落として高尾を見遣った。
「……聞いたところで、お前が後悔するだけなのだよ」
「え、なに。それ余計気になんだけど」
 制止のつもりが余計、煽ってしまったらしい。好奇心は猫だけでなく、鷹をも殺すのか。
 もしも。
 その澄ました小憎らしい笑顔に、俺の見た初夢の内容を――自主練習中、二人きりの体育館で、お前の唇を強引に奪ったのだと。俺にとってそれが、ファーストキスだったのだと。
「なーなー。そこまで言ったなら教えろってば」
 ――言ってやったら、どんな反応をするのだろうか。
タグ:緑間×高尾
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