2014年12月31日

【第1回緑高ワンライ】お題:雪

Twitterにて緑高深夜の真剣創作60分一本勝負様(@mdtk11)が主催なさっていらっしゃる「緑高版ワンドロ・ワンライ」。主旨はこちらに詳しくありますが、簡単に言えば、直前に出されたお題を使って一時間制限で何か書きましょう、というもの。

フリーワンライのテンプレ文章をちょこっと弄った文章で失礼致します。
先日こちらの企画の第一回が開催されまして、遅刻でしたが参加させて頂きました。
自分で時間を計りまして一時間、相変わらずにように時間が足りませんね……時間内に推敲・読み直し出来なかったので、またも助詞不足や表現被りが多々ですが、投稿時そのままを載せております。

そんな感じで続きは折り畳みです。


「本当に、いったいどうしろというのだよ……!」
 寒風吹きすさぶ二月の祝日。朝食を終え、ずかずか大股で自室に戻った緑間は、開口一番呪いを吐いた。
 やり場のない憤りを掌に込め、その手をぐっと握りしめたまま、ぶるぶると震わせる。苛立ちを滲ませた眼光は、今なら人一人くらい殺せてしまうかもしれないくらい、陰鬱で鋭い。はっきり言ってかなり、人相が悪い。
 せっかく部活もオフな祝日の朝っぱらから、景気の悪い顔など誰もしたいとは思わない。だが歪んでいく表情筋を止める術を、緑間は知らなかった。
 原因は――本日のおは朝占いである。
 かに座の順位じたいは六位とまずまず、可も無く不可も無くといったところ。だが問題は、本日指定されたラッキーアイテムだ。緑間真太郎のポリシーとして、基本、どんな物が指定されたとしても、金に糸目を付けずどうにかして入手する。事実、これまでずっとそうしてきた。
 だが、今回ばかりは内容が悪い。悪すぎる。
 カーテンを開けて窓の外を覗き見上げ、抜けるような晴天を恨めしげに見つめた。
「……この青空で、どうやって雪うさぎなど調達しろと」
 雪うさぎ――かつて、これほどの入手難易度の高いラッキーアイテムがあっただろうか。幾ら何でも入手が難しい季節天候系の物を指定するのは如何かと思われるのだが、それがラッキーアイテムなのだと占いで出ているのだから仕方が無い。
 はぁ、と深々吐かれた息は青く、どんよりと凝っていた。ラッキーアイテムが調達できないとなると、いつどんな災いが降りかかってくるかわからない。今日は午後、高尾と逢う約束があったのだが、それどころでは無くなってしまった。
(何かで代用ができないだろうか)
 先ず脳裏に浮かんだのがうさぎを氷で作成する、という手法だ。幸い、家に彫刻刀とノミならある。だが問題は、それなりの大きさをした氷塊の入手が即時不可能なことと。そしてそもそも、雪うさぎでは無く氷うさぎになってしまう点だ。
 次に、というか妥協ではあるが、雪うさぎの形をしたグッズを急いで買いに行くこと。雪うさぎそのものではないが、模られているならば幾分マシなのでは無いだろうか。となるとできれば大きく、そして数を揃えるしかない。質より物量作戦だ。
 今日という一日を安穏に過ごす方策は、もうそれしか無い。
「……こうしてはいられない」
 部屋着でもだらしのない格好を嫌う緑間は、朝食を摂る時点でシャツとスラックス姿だった。クローゼットからタイを取り出して結び、その上にニットを着込む。ジャケットに袖を通してコートを羽織れば、あっという間にシンプルなトラッドスタイルの完成だ。出かける支度を調え、革製の長財布と携帯をロングコートのポケットにしまおうと机に手を伸ばした、その時だった。
 耳に馴染んだ着信音が部屋に響く。流れるメロディで相手が誰だかすぐに把握した緑間は、画面を一瞥もせずに電話に出た。
「高尾か、なんだ。待ち合わせにはまだ早いだろう。たいした用で無いなら切るぞ」
『開口一番ひでーなおい。素っ気なさ過ぎじゃねえ? 仮にも恋人からの電話なんですけどー』
「すまないが一刻を争うのだよ」
『わーってる。今日のラッキーアイテムだろ? おは朝もやってくれるよなー、あんなん雪降ってない地方どーすんだって話だよマジ』
「笑い事では無い」
『そうだけどさ。今朝おは朝占い見てて、俺マジ笑っちゃったわ。これ真ちゃん慌ててんだろーなって』
「わかっているならば、用意できるまで近づくな。……俺は、お前を巻き込みたくない」
『……あ、うん。なんか今のですっげー愛感じちゃったから、さっき邪険にされたの許す』
「それは何よりだ。ではな」
 話を切り上げ、さっくり通話を切ろうと耳を離し掛けたのを察したのか、それまでよりも大きいボリュームで高尾が叫んだ。
『ってちょ、待ってって! まだ切ンなよ!』
「なんなのだよ」 
『今、家の前まで来てンだって。逢う時間、繰り上げらんない?』
「……は? お前は人の話を聞いていなかったのか」
『聞いてたって。だからさ、真ちゃんちが大丈夫なら家あげて欲しいんだけど』
「それは――そこまで問題でも無いが」
 腕時計を確認すると、時刻は午前九時を少し回ったところ。家を訪問する時刻としては少々早いが、親には高尾と外出する旨をあらかじめ言ってある。用ができたので、出かける前に少し早めに家へ来て貰ったとでもいえば格好が付くだろう。
『真ちゃんのラッキーアイテム問題解消に来た――っつったら?』
「わかった」
 一にも二にも無く頷いて電話を切り、机に携帯を置いた緑間は高尾を迎えるべく、部屋を出た。
 
 
 
「で、何処にある」
「まあまあ、慌てんなって。真ちゃんの部屋来たのって未だ二回目だけど、相変わらず整頓されてんなー」
 ベッドに腰掛け、物珍しげに首を動かしてはあちこち視線で部屋を物色する高尾の手荷物は、コンビニのビニールが一つだけだ。まさかあの中に雪うさぎが入っているとでもいうのだろうか。早く確認したいが、幾ら恋人相手とはいえ、人の荷物を勝手に漁るのはマナー違反だ。
 悶々としていると、ハハッと高尾が笑って肩を竦める。
「すげー気にしてる感」
「当然だろう。今日の順位は六位だったから、まだそこまで悲観しては居ないが。今こうしている間にも、ラッキーアイテムを持たないが故に、お前を巻き込んで何か起こりはしないかと気が気でない」
「部屋にいんのに? 外よか安全だぜ」
「場所は関係ない」
 きっぱり言い切ると「しゃーねえなあ」と高尾が口元を緩めた。
「ま、真ちゃんの場合は心配に足る実績があっからな。だから俺も急いで家出てきたんだし」
 がさがさとコンビニ袋に手を突っ込み、高尾が取り出したのは小さなストラップ。小さくはあるが、雪うさぎの根付けがとても可愛らしい。
「妹ちゃんから借りてきた。これでちっとは違うっしょ。後で出かけるとき、これ付けてこうぜ」
「……ああ、助かる」
 小さな守り神に胸をなで下ろしつつも、緑間の胸には未だ不安が巣くっている。果たしてこれだけで、運勢の天秤は良き方へと傾いてくれるのだろうか。
 せっかく――高尾と二人、久々にゆっくり過ごせる一日だというのに。
「あと、本命はこっち」
「本命?」
 そ、と言って高尾が取り出したのは、松の葉が四本に南天の実が四個ついた枝。それから、通年で人気のある、大福をあしらった有名なバニラのアイスクリームだった。
 ぺりぱり、おもむろに蓋を開けた高尾が出てきた二個のアイスに松の葉を刺し、「あ、これちゃんと洗ったから。綺麗だからな」と言いながら赤い南天の実をつぷりと埋める。
 どこからどうみても雪、ではないが雪うさぎのような物の完成だ。
 両手に腰を当て、一仕事したと言わんばかりの高尾がドヤ顔で自分を見上げる。
「ラッキーアイテムが食べ物の時ってさ、真ちゃん朝一番で食うっていってたじゃん? 雪じゃないけど、雪大福うさぎ。一緒に食えば、今日一日安泰だって」
 さそり座のラッキーアイテム、アイスだったし――と。
 にこやかに笑う高尾を前に、気の利く恋人を持った自分は心底果報者だと。緑間はしみじみと思った。
タグ:緑間×高尾
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